島田裕巳『浄土真宗はなぜ日本で一番多いのか 仏教宗派の謎』
仏教諸宗派の歴史と概要がわかる便利な本です。神話や伝説を排除し、客観的な事実を公平な視点からまとめてくれている良書です。
廃仏毀釈の影響の大きさや天台宗の成立と伝承の順序のねじれ、あるいは天台本覚論に「草木成仏」の考え方があることなど、一般にはあまり知られていないトリビアな知識が挟み込まれていて、いろいろ勉強になりました。
本書の「はじめに」にあるように、統一的な観点から、諸宗派について解説を加えた書物というのは意外にも類書がありません。買って読んで損はないと思います。
タイトルの浄土真宗については、著者は「他力本願の教えなどは、あまりにシンプルであるがゆえに、近代社会における信仰のあり方としては、必ずしも十分な思想性を備えているとは言い難い」(230頁)と見ていて、宗派の外のインテリから高く評価される面はあるにしても、宗派内部の思想としては弱いという評価を下しています。
どの宗派も今日葬式仏教として、葬儀に密接に関係している以上、団塊の世代が世を去ったあとに、本格的な檀家制度と宗派それ自体の危機が訪れるだろうと言っています。そうでしょうね。どうなることやら。
(幻冬舎新書2012年760円+税)
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