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2012年8月24日 (金)

加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』

それなりに面白い本でした。近代日本の戦争をめぐる歴史がうまくたどれます。高校生相手の講義をもとにした本のため、説明がわかりやすくていいです。

しかし本書は通り一遍の概説ではなく、普通の人があまり触れることがないような政治家の書簡や専門研究の成果にも触れられていて、未知の事実に対する驚きとともに、かなり突っ込んだものになっています。歴史学者の講義として納得のいく作りになっています。

ただ、著者の軽蔑する「刺激的な言葉を書名にした近現代史の読み物」が「過去の戦争を理解しえたという本当の充足感やカタルシスが結局のところ得られない」(407頁)という言い分はわかるにしても、では、そこでの議論がどの点で不適切なのかということについて、少しでも議論しておいてくれたらありがたかったなのにと思います。

専門の研究者はこの分野に限らず、マスコミ受けのする評論家や作家の意見を普通冷ややかに見ていることが多いのですが、それがどうしてなのか、どこがヘンなのかということを指摘してくれるほどお暇でもなければ、親切でもないようですので、一般読者はしばしば扇情的な議論に傾きます。

その辺をお高くとまらずに、かつ淡々と事実を指摘してくれるようなスタンスで論じてくれると門外漢にとってこれほどありがたいことはありません。もっとも、著者はそういうこともされているかもしれませんので、ほかの著書も読んでみたいと思います。

なお、太平洋戦争の開戦に至る記述では、先日読んだ森山優『日本はなぜ開戦に踏み切ったか』(新潮選書)のほうがスリリングで面白かったです。学校秀才に対する不信感の有無が決め手のような気がします。

(朝日出版社2009年1700円+税)

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