森山優『日本はなぜ開戦に踏み切ったか 「両論併記」と「非決定」』
著者は「日本が開戦に向かう政治過程をつぶさに検証して行くと、これでよく開戦の意思決定ができたものだと、逆の意味で関心せざるを得ない」(212頁)と言います。
当時の軍部は選り抜きの秀才たちからなっていましたが、そこが弱点になっていたのかもしれません。私の目には無責任な学校秀才たちがこぞってパニックになっていたと映ります。
軍人とはいえ官僚ですから、未曾有の危機に対応できないという官僚制の弱点はそのまま持っています。戦後、軍人はいなくなりましたが、官僚はそのまま生きながらえて、今もなお権勢を誇っています。
それどころか役人が、民間に天下りするうちに、日本中の組織がみんな官僚の行動パターンを身につけるようになってしまい、進取の気性とか、革新性とかどんどん姿を消していってしまいました。官僚型人間が出世して、組織の覇気を損なって久しいでしょう。既視感があります。ああ、どうしましょう。
当時の東郷外相の支離滅裂に見える頑張りが、開戦を避けるためのかなり周到な行動だったことなどもわかり、本当によく調べてあると思います。また、「我々の認識をいささかミスリードしかねない天皇の戦後の発言」、つまり、主戦論を抑えたらクーデター起こったに違いない、という発言についても、デリケートな問題ですが、納得のいく解釈がなされています。
それにしても、われわれはこの情けなくなる日本的行動パターンを、今もあらゆる組織で繰り返していますが、これを打破するにはどうしたらいいんでしょうね。おそらくは、われわれ自身が新たな価値を生み出すような、イノベーティブな組織の行動原理を探し当てなければならないのでしょう。
私も自分の研究のテーマとして追求したいと思っています。
(新潮選書2012年1200円税別)
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