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2012年8月 2日 (木)

『対話録「さすらい人」ブレンデル リストからモーツァルトへの道程』

読み応えのある本でした。ブレンデルは好きなピアニストの一人ですが、この対談もまた、音楽の印象通りの知的で、ユーモアのある話しぶりでした。

ブレンデルはとりわけ楽譜を丁寧に解釈し、作曲家の心をしっかりと汲み取り、見事な演奏世界を形成していくことのできるピアニストですが、本書では想像していた以上に勤勉で努力家で、しかし、テクニック先行型ではなく、情熱とユーモアのある音楽家としての姿が浮き彫りになっています。

編著者のマルティン・マイヤーも、ブレンデルの話を実にうまく引き出しています。ブレンデルと話が通じるくらいにヨーロッパの名演奏を聴き込んでいることからしても、只者ではありません。この名インタヴュアーがあって初めて、ブレンデルの並外れた耳の良さと聡明さの一端がうかがわれることになったのだと思います。

翻訳は訳文が読みやすく、こなれていていいと思いましたが、政治思想家のアイザヤ・バーリンがイザイヤ・ベルリンになっていたり、イヨネスコがイオネスコになっていたりして一瞬戸惑います。ちょっと調べるなり、専門家に聞くなりしてみればいいのに、もったいない気がします。ドイツ語はできる人なんでしょうけどね。

ブレンデルが敬愛するピアニスト、フィッシャー、ケンプ、コルトーの3人のうち、コルトーを除いてあまり聴いたことがないので、これからの楽しみとして、すこしずつ聴いていくつもりです。

最後に索引がついているので、ブレンデルが作曲家や同時代のピアニストたちをどう論じ、どう評価しているかがたどりやすくなっています。グールドなんかボロクソに言われていますね。そうだろうなあ。

音楽をこれくらい深く聴き、解釈できる人はそうはいないと思います。ピアニスト必読の書ですね。

(音楽之友社2001年2600円+税)

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