グリアソン『沈黙交易―異文化接触の原初的メカニズム序説』
グリアソンのSilent Trade(1903)の翻訳があったことを知って、早速読んでみました。これは確かに先駆的な経済人類学的業績ですね。世界各国の民族学的文献が参照されていて、原初的暴力と殺人の段階から交易段階への人類のジャンプがわかるように描かれています。
これで見る限り、まずは人類は共同体維持のため、かなりの殺し合いをやってきたことが報告されます。原始社会というと平和で穏やかなイメージもありますが、決していつもそんなに安閑とはしていられなかったようです。
そして、そんな殺し合いもいつまでもやってはいられないということで交易が始まった、と著者は見ています。そうかも。人類の死因の大きな部分を実は殺人が占めてきたとは最近の研究でも明らかになってきていますが、そのことを裏付けるものとしても貴重な文献かもしれません。
沈黙交易自体も世界中の例がふんだんに収録されていて、実に面白いです。ハンガリーの法哲学者ショムローの財貨取引についての研究(1909)も、本書の研究をかなり引用しているので、個人的には馴染みのある話も結構ありましたが、いずれにしても、本書はこの分野の先駆的業績として貴重だと思います。
ついでにショムローの『原始社会の財貨取引』(1909)もどこかの本屋が出してくれないでしょうかね。訳文は完成していますけど。
(ハーベスト社1997年2200円+税)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ドイツ語で読む珠玉の短編(2026.06.23)
- 山本七平『小林秀雄の流儀』(2019.07.28)
- 田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(2017.02.20)
- 天外伺朗『宇宙の根っこにつながる生き方 そのしくみを知れば人生が変わる』(2017.02.19)
- 柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント