« 米原万里『真夜中の太陽』 | トップページ | 内山節『「里」という思想』 »

2012年9月 6日 (木)

チャルディーニ『影響力の武器 なぜ、人は動かされるのか』

著者は本書の「まえがき」で告白しているように、そのむかし、販売員や基金集めの人たちの説得を真に受ける、いいカモだったそうです。読みたくない雑誌や「清掃局員の舞踏会のチケット」(?)を買わされたりと、「自分でも心配になるくらい」だったと言います。

その苦い経験が、著者をして心理学における「承諾」の研究に向かわせたわけですが、著者がユニークなのは、よくある社会心理実験だけからではなく、実際にセールスマンや募金勧誘者、広告主などのその道のプロに弟子入りし、修行するといういわゆる「参与観察」を行なっていることです。

著者がそこから導き出した原理は「返報性、一貫性、社会的証明、行為、権威、希少性」の6つで、本書はこれを丁寧に解説してくれています。

それぞれにまとめと設問、また、読者からの応答が(第2版なので)あって、理解を助けてくれるだけでなく、楽しませてもくれます。こういう本を書くのはアメリカ人の学者は上手ですね。見習わなければ。

著者の写真を見ると、いかにも人のよさそうなおじさんで、なるほど騙されてきたのもなんとなくわかる気がしますが、いい人にふさわしく、本書は親切にも読者がだまされないための防衛法も記されていて行き届いています。

しかし、それにしても、騙しのテクニックはアメリカでは猖獗を極めているんですね、本書に出てくる様々な手口にはつくづく感心させられます。

訳文で気になったのは「独壇場」(208頁)で、これは「独擅場」ですよね。あと、「自分の幼い息子に進んで短剣を突き刺したアブラハム」(343頁)というのは原著の誤りか翻訳の誤りか確認していませんが、「突き刺そうとした」はずで、突き刺してしまっていたらアブラハムの家系図が変わっていたことになります。

そのうち確認しておきますが、全体にはとてもいい本でした。

(誠信書房2007年2800円+税)

|

« 米原万里『真夜中の太陽』 | トップページ | 内山節『「里」という思想』 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。