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2012年9月14日 (金)

木田元『偶然性と運命』

運とか運命というのは理屈で説明がつかないものなので、哲学者も伝統的に困ってきたようです。著者も決定的な解決ができる問題でないことは承知のうえで、挑戦されたとのことです。

しかし、そうは言いながら、西洋各国語に通じた博覧強記の人だけあって、西洋哲学史の中で、運命や偶然性の問題がどのように扱われてきたかを論じる第3章「〈運命〉の思想史」は読み応えがあり、示唆に富んでいました。

ライプニッツやショーペンハウエル、ニーチェも生の哲学の系譜ととらえ、ハイデガーやメルロ=ポンティまでを、生と時間論との関わりの中で、運命について思考してきた思想家だとみるところが刺激的でいた。

著者は、メルロ=ポンティを援用しつつ、〈人は自己の過去の経験を現在の経験の中でとらえ直し、あるいは他者の経験も事故の経験の中で捉え直すことで、その統一を形成することができる〉(158-159頁)ということを、運命の暫定的な説明としています。

いろんな哲学者が苦心しているそのさまがわかるだけでもありがたい本です。最後の章のドストエフスキーについてのエッセーもよかったです。文学で締めくくるのはいいですね。

(岩波新書2001年720円+税)

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