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2012年11月26日 (月)

マルコム・グラッドウェル『急に売れ始めるにはワケがある―ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』高橋啓訳

流行が突然せきを切ったように起こる瞬間をティッピング・ポイントといいますが、本書の原題がそれです。著者は様々な科学の成果を取り入れながら、社会が動く瞬間に光を当てています。

大勢の人が動き出すまでには、人びとと情報を媒介する「コネクター」、情報に通じて説明好きな「メイヴン」(通人)、それに、情報自体のストーリー性などの「粘り」、行動の環境になる「背景の力」、流行の種を見出す「イノベーター」、行動の模範になりうる「セールスマン」といった人や要素が必要です。

それぞれが役柄を持った芝居の登場人物のようでもあります。ハッシュパピーやエアウォーカーの流行について、あるいは性病や暴力の「感染」についての分析も見事です。

社会心理学やネットワーク理論の研究成果、実験結果もうまく活かされていながら、論文臭くならず、一般読者向けに平易かつスリリングに話を展開でっきるところは大変参考になります。

私の勤め先も何かのきっかけで入学者が増えるといいんですけど、どうなることやら。全体に斜陽業界ですからね。

訳文は特に日本語として引っかかるところがなくて良いと思いますが、文庫本という制約のためか、注釈が一切無くて参考文献をたどるのが難しくなっています。同著者のOutliersは今半分くらいまで読みましたが、こちらの方は文献注がしっかり出ています。本書も原本にはおそらく注釈があるはずだと思います。いずれにしても、原書を注文して確認してみます。

ちなみにOutliersは翻訳がかなりひどいとのことなので、このまま原書で読んでしまうつもりです。英語の勉強にもなりますし、ま、いっかという感じです。こちらも傑作です。そのうちここに感想をアップします。

(ソフトバンク文庫2007年780円+税)

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