ケルテース・イムレ『運命ではなく』岩﨑悦子訳
刊行当時読んで、最近DVD『フェイトレス』を二度観て、ハンガリー語の台本を読んで、また原作に戻った次第です。
やはり小説は綿密に書き込まれていますね。映画の中の俳優陣の細かい演技の意味が、原作を読んで初めて分かったところもいくつかありました。台本を読んでもわからなかったんですけど。
ということは、少なくとも演出家は、そしておそらく俳優たちも、原作をしっかり読み込んで演じていたのでしょうね。スタッフも含めて実に気合の入った映画でしたから。
他方で、台本になって新たに付け加えられたシーンもあり、映像では取り上げられなかったシーンもあって、それぞれに思惑が少しずつ異なってもいます。結局、映画は映画で、小説は小説で、それぞれに良い作品でした。
本書は内容としてはナチの収容所の話ですから、読んで楽しい本というわけにはいきませんが、決して悲惨さを売りにするものではなくて、淡々とした筆致である種の明るさを持って書かれています。
訳者解説で岩﨑先生(私のハンガリー語の先生の一人でもあります)が書かれているように、少年の成長小説としても、当時の社会主義体制の批判の本としても、また、言語批判の本としても読めます。いろんな読み方ができる本です。
映画とともに、多くの人に味わってほしい小説です。
(国書刊行会2003年1900円+税)
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