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2012年12月21日 (金)

ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』村井章子訳

人間は、直感的で感情的な「速い思考」と、意識的で論理的な「遅い思考」とを組み合わせて用いながら、意思決定を行なっているというのが、著者のいう「ファスト&スロー」です。

本書ではこの前者をシステム1、後者をシステム2として話が展開します。システム1は自動的に働きますが、システム2は努力を伴います。で、しばしば人間は怠け者なので、システム1だけで済むものなら済ませようとします。

そして何よりこのシステム1だけで済ませようとするところに、人間の不合理な行動の鍵が潜んでいます。システム2は怠け者なのだと著者は言います。

この二分法は人間の認識や行動のあやまちを実にうまく説明してくれます。我々のあやまちの原因は、衝動的に結論に飛びついたり、あっという間に目に映る物から固定観念やストーリーをこしらえてみたり、答えを出しやすい方法を優先したり、原因と結果を妙につなげてみたりするところから生じています。

これまでも他の本で、とりわけ行動経済学の本で扱われてきた人間の思考の癖とか慣性はもれなく収録されている感じです。なにせ、著者はこの道の大家ですからね。

本書でとりわけなるほどと思わされたのは平均への回帰という現象です。確率論的な事象は平均値に近づこうとしますが、このことを妙に解釈することで、人はとんでもない因果論を主張する場合があるということです。栄養ドリンクを飲むと鬱が解消するなんてのがこれです。

専門家も同様のあやまちに足元をすくわれることが少なくなくて、むしろ専門家だからこそ陥りやすいあやまちが縷縷説かれています。このあたり統計的にもびっくりするような数字が示されています。

はたして人はそうした自分のあやまちにいつかは気がつくのでしょうか。気がつくとしたら一体どんなきっかけでしょうね。気がついてほしい人はいろいろといるんですが、そういう人ほど気がつきそうにないんですよね。

下巻が楽しみです。

(早川書房2012年2100円+税)

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