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2012年12月17日 (月)

新渡戸稲造『西洋の事情と思想』

新渡戸稲造の博識と人柄が偲ばれる名著です。ずいぶん以前に読んで印象深かった本ですが、先日生誕150年記念研究会(という名の飲み会)を開いたので、改めて読み返しました。

やっぱりいい本でした。語り口ももともと講演だったものを起こしたこともあり、親しみやすく、ユーモアにあふれています。

長い海外生活の中で得られた知見からもいろいろ教えられるところがあり、例えば紀元前の戦争の話でギリシャとイランの代表者が、国際会議の席上で言い争ったりするなんてのを目撃するのは著者ならではのことではないでしょうか。

また、ヨーロッパとアジアの境とされる、ウラル山脈のなだらかさについて、著者は「私も幾度か通ったが、いつ越えたのかわからないような所である。ブラブラ散歩しながら通れるような所で...」(46頁)と書いています。こういうふうに実際に体験し、実感した話というのは、説得力があります。

「だから境界といえば境界であるが、これをもって民族の移動を妨げるとか、、戦のときに盾に取るというほどの境界ではない」(同頁)とか言われると、世界史の見方もちょっと違ってきます。

ヘレニズムやヘブライズムその他の基本的知識も勘所をとらえてわかりやすく述べられていますので、比較文化論の参考書にもうってつけです。

ただ、巻末の平川祐弘氏による解説は、本書の内容について、著者よりもずいぶんな高みに立ったところからの否定的評価がなされていて、驚きます。

本はつまらないけれど、多くの優れた弟子たちを育てた点で、やはり「近代日本の偉人の一人」(216頁)だろう、という解説ってありですかね。

(講談社学術文庫1984年600円)

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