岡田斗司夫FREEex『オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より』
朝日新聞土曜版Beに連載中の人生相談コーナーの中で、とりわけ異彩を放っている著者の回答をいつも楽しみにしていますが、本書はこれをただ集めただけではなく、回答作成の一部始終をきっちりと解説した本です。
一人の相談者の背後に同様の悩みを抱えているかもしれない1万人を想定して、みんな面倒うみましょうというスタンスで答えられていたんですね。どうりで、相談者に対する愛情が感じられるだけでな(言うまでもなくそれはまず何よりも大事な要素ですが)、広がりと深さがある回答になるはずです。
相談の文章を読み込み、分析し、問題点を探り出すところからすべて公開されていますので、本書は問題解決能力の養成にも役だってくくれそうです。ただ、実際には、著者独特の目の付け所とか、ひらめきとか、とうてい真似できないなと思わされます。
著者は回答するために、文責、仕分け、専攻、アナロジー、メーターといった「11のツール」を用いています。それぞれに興味深いものですが、この中でも「三価値」というのは特に興味を覚えました。今風に言い換えれば、三極とは功利主義と自由主義と共同体主義(美徳の追求)という3つの極です。
「僕たちの世界観は、たぶんこの三極対立でできている。だから悩むんです・・・その決断はいつも『微妙に違う』思考過程と結論を生みます」(190頁)
「『最大多数の最大幸福』と『個人の自由と権利』、この間で論叢があるのはわかるけど『共同体(コミュニティ)としての美徳」という要素を入れて年がら年中議論してお互いに考えよう。よりよい共同体を目指していこう、という21世紀の今となっては逆に斬新な考え方です」(192頁)
そうです。サンデル教授の議論の仕方ですね。そのいいところもうまく取り込んであります。サンデル教授にはあまり感心しない人でも、著者にはきっと感心することでしょう。
まあ、そんな理屈はともかく、巻末の相談―回答からいくつか拾い読みしてもらえれば、著者のすごさがわかると思います。ご一読を。
(幻冬舎新書2012年940円+税)
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