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2013年1月25日 (金)

ひろさちや『下りる。 日本に生まれた不運をあきらめるために』

いつものように、こだわらずのんびり生きましょうというメッセージの本ですが、わが国が貧困率でアメリカに次ぐ高い水準になっていること、東日本大震災、国内総生産の1.8倍、892兆円に上る国債、公債残高をみて、「日本はもうダメだと思います。いずれ財政破綻をするに違いありません」(19頁)という悲観的現状のもとで書かれています。

もちろん決してやけくそになるわけではなく、ゆったり、のんびり、ほどほどに生きることを提唱してくれています。年収も下がりますが、欲望も少なくし、夢や願い事をもたず、苦しみは苦しみのままじっくり味わうという境地です。自分がそうなれるかどうかはともかくとして、仏教者ならこうでなくちゃいけないでしょうね。

本書では特に、日本人には「必要悪」の考え方が理解できないという主張に感心させられました。

著者は「善か/悪かを判断するのは宗教」と言い切っています。そして、日本人の多くは宗教を持たないため、物事に対して、善か/悪かの判断をすることなく、必要か/不必要かの判断だけをすることになります。

要不要の判断をするのは政治・経済・社会ですから、人びとはそこでくだされた判断に従わざるを得なくなります。「その結果、必要なものはすべて善になり、不必要なものは悪とされます」(532頁)

「だから、死刑という名の人殺し、体罰という名の暴力が大手を振って罷り通ることになってしまうのです」(同頁)とも言います。そうですね。

こんにちのわが国でもしばしば二項対立の相手方を敵として攻撃する議論が見られるのは、人間性と宗教に対する感受性と洞察力が失われているから、とも言えるのかもしれません。

(中経出版2012年1000円+税)

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