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2013年2月 7日 (木)

『ウィトゲンシュタイン全集9 確実性の問題・断片』黒田亘・菅豊彦訳

ウィトゲンシュタインの断章は、大量のカードを取捨選択して作られていると聞きますが、この「確実性の問題」は、断章のスタイルをとっているものの、じっくり一つのテーマを継続して追求した感じがします。

人が物事を確実だ判断する前提は実は確実とはいえないのではないか、ということをしつこくしつこく考えています。われわれの判断の根拠はたとえば習慣であったり、信念であったり、社会通念や分別などと呼ばれるものだたりするのですが、これを疑いだすと確実ではないにもかかわらず、決して非理性的でもないことに気付かされます。

ウィトゲンシュタインが「言語ゲーム」と呼ぶのがそれですが、「それには根拠が無い。それは理性的ではない(また非理性的でもない)。それはそこにある。――われわれの生活と同様に」(140頁)と述べています。

最後の方では「人間の営む探求には、根本原理とも称すべきものがあるのではないか」(167頁)とも言います。判断を成り立たせている根拠はやはりあって、それはいい加減に見えても、人びとの承認に支えられています。これは社会科学の問題でもあります。ケルゼンやショムローの法哲学を連想させられました。

とにかく実に刺激的な本です。人間の「間違い」について考える場合にもこの上なく有益です。実際、キャスリン・シュルツも著作の中で触れていましたが、私も今後『哲学探求』とあわせて折にふれて読み返すつもりです。

(大修館書店1975年初版4700円+税)

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