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2013年2月 5日 (火)

徳野貞雄『農村の幸せ、都会の幸せ 家族・食・暮らし』

日本の農業の歴史から今日の問題点の指摘、それから今後の農業のあるべき姿の追求まで、話題とアイデアが見事なまでにぎっしりと詰まった本です。

合鴨農法や有機農法を実践する農家の取材も広範囲で丁寧に行なっていて、単なる書斎派ではない著者の行動力が光っています。山口、広島、そして九州地方の農家がよくとりあげられていますが、ユニークな試みをする人がたくさんいらっしゃるんですね。ほんとに感心します。日本の農業の未来が明るくなったような気がします。

著者はもう、とにかく農業に関しては言いたいことがたくさんありすぎて困るくらいの書きぶりで、読む方も著者のいろんな話題と頭の回転の速さについていくのが大変なところがあります。著者が何気なくさらっと書いた箇所にも、おお、と思わされるところがあり、とにかく賑やかな本です。

事実の指摘などを含めて私が感心させられた箇所を以下に挙げておきます。

・日本は「世界の蛸の二分の一、鮪の四分の三を食べ、松茸を世界中から集め、キャビアだフォアグラだと騒いで王侯貴族のような食べ方をすると同時に、カップラーメンやコンビニ弁当などの『食の貧困』という二極分化した食事を併存させた食生活を国民全体がしているのです」(69頁)

・「日本は明治時代から、人口を3.5倍に増やしました。これは本来異常なことなのですが、政府も国民も異常が100年続くと状態だと思ってしまいます」(114頁)

・「現在の学校教育は子どもをサラリーマンにはしますが大人にする教育はありません。むしろ、教育で子どもを大人にすることは、不可能ではないかと考えています」(141頁)

・「農家・農村を残すには夫婦別姓です」(151頁)

もともとは著者が集落の人間関係に基づく資源を考慮に入れた「T型集落点検」(144頁〜)という考え方(これはこれで慧眼です)を確認したくて読み始めた本ですが、いろいろと他にも面白い記事が満載の本でした。

(NHK出版2007年740円+税)

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