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2013年3月 2日 (土)

森敦『月山・鳥海山』

正確で美しい言葉を紡いで、それが何に触れても文学になってしまうような、不思議な作家です。著者の『意味の変容』を読んでみたいと思っていて、ふと自分の本棚に本書があるのを見つけて、まずはこれからということで読みました。

山形の人たちの中で自然と人びとに溶け込んでしまうような境地が、一見何の変哲もない滞在記のような文体にもかかわらず、いや、それだからこそかもしれませんが、いつのまにか開けてきます。

人も自然もそれぞれがそれぞれにそのまましっかり存在していることがとらえられています。あたりまえといえばあたりまえですが、そのあたりまえのすごさがしみじみと伝わってくるところが不思議です。

わが国の私小説の系譜に属する作家なのでしょうけれど、私小説の逆説的な美点というか、実は自分のことを何も語っていなくて、そこにあるそのものを描いてしまえるという特徴が現れています。

山形には一度研究会で行ったことがありますが、改めてゆっくり旅してみたくなりました。

『意味の変容』も楽しみです。

(文春文庫1979年380円)

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