ひろさちや『ひろさちやの英語で話す日本の仏教』ジェームス・M・バーダマン訳
かつて著者の『やまと教』(新潮選書)には感銘を受けましたが、本書はそのやまと教を含めて、日本の宗教のいろいろを歴史的にコンパクトに説明してくれています。
本書では、宗教は「人間らしい生き方を教えるもの」(14頁)と定義されています。日本の場合は「古き良き時代に、われわれの祖先たちが生きた美しい生き方」(22頁)を理想とする民族宗教が、著者のいう「やまと教」ということになります。
したがって、やまと教は一応日本書紀や古事記を聖典扱いにはしますが、これといった特定の聖典も教義も持っていません。日本人であれば全員が信者にされてしまうあいまいな民族宗教なのです。
やまと教の神はいわゆる八百万の神で、神話の神々や天皇、霊、霊力、道祖神や七福神、鬼神や貧乏神までも含まれます。こうした神々に対しては分け隔てなく感謝の気持ちを持って接しなければなりません。
また、気や穢れや禊、祓いといった重要な概念も解説され、実に興味深いのですが、詳しくは本書を読んでください。
このやまと教は、歴史上外国から仏教や儒教、道教、キリスト教が入ってきても今日までびくともせずに人びとの精神の中に息づいているというのが、著者の主張です。多分そうなんでしょうね。
また、日本の宗教史の簡潔明瞭な記述も印象的で、この内容に適切な英語訳が施されているのは、日本の宗教について外国人に説明する際に本当に助けになると思います。
外国で新しい学説があるとかいうと、競って取り入れるのがわが国のインテリの昔からの習性ですが、外国に対して日本についての説明をするという方向で英語その他の外国語を学習することはあまりなされていないと思います。
かつての新渡戸稲造や内村鑑三、鈴木大拙といった先人は著作の多くが英語だったことを思うと、わが国の知識人の世界に向けての発信能力は劣化しているように見えます。
もっとも、語学力もさることながら、紹介に足る内容のあるものを書いていれば、必ずや有志が翻訳してくれます。もっと頑張らなきゃですね。
(株式会社ジャパンブック2010年1300円税別)
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