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2013年4月 1日 (月)

ナシーム・ニコラス・タレブ『強さと脆さーブラック・スワンにどう備えるか』望月衛訳

本書は『ブラック・スワン』第二版のために新たに書き下ろされた部分をまとめて一冊にしたものです。初版への各界からの専門家の批判にまとめてこたえてもいます。

専門家の批判は著者の想定の範囲内だったでしょうけれど、一般読者から示された理解度の高さは著者の想定を超えるものだったかもしれません。「実際、知性があって好奇心があって開かれた心を持った素人の皆さんは私の見方だ」(56頁)と言っています。そうだとしたら、世の中まだまだ捨てたもんじゃありません。

初版刊行後に著者が気づいたことの一つが、ランダム性の「必要」です。

「で、私は大事なことを見落としていた。生きた組織(人間の身体でも経済でも)には変動性とランダム性が必要なのだ。それだけじゃない。組織に必要なのは果ての国に属する種類の変動性であり、ある種のストレス要因だ。そういうのがないと組織は脆くなる。私はそれにまったく気づいていなかった」(40頁)

このことから著者独自のランダム性を取り入れた健康法にも言及されています。10時間近くゆっくりと散歩したり、突然ダッシュしたり、一日何も食べないでいて、突然ウェイトトレーニングをしたり、めっちゃ薄着をしてみたり、睡眠をとらないときと取り過ぎのときを作ってみたりという「健康とは言えない」健康法です。

それで「私の身体がありとあらゆる点で変わった。いらない志望はなくなり、血圧は21歳の水準、そんな感じだ。加えて、頭はすっきりしたし、ずっと鋭くまわるようになった」(44頁)

自分の身体を実験台にして、免疫力の強化を行っている感じですが、なかなかまねできそうにないですね。ただ、不規則な生活を続けると必ず病気になるというわけでもないということはわかります。むしろ規則正しい生活なんての気にしなくていいとなると、現代人の強迫観念の一つがぬぐい去られていいんじゃないでしょうか。

ただ、心配なのは、著者の以下の記述が当たって、日本経済がブラック・スワン状態に陥ることです。

「私は非線形性の下で金融政策を誤るとどんな問題が起きるか説明しようとした。通貨を供給しても何も起きず……急にハイパーインフレが起こる。あるいは何も起こらない。政府に、ヤツらごときではわからないおもちゃをくれてやってはいけない」(110頁)

「何も起こらない」といいのですが。

(ダイヤモンド社2010年1500円+税)





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