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2013年5月30日 (木)

内田美智子(文)諸江和美(絵)佐藤剛史(監修)『いのちをいただく』

いい本です。

朗読の動画を見て注文しました。

動画はここ

心を動かされます。

本書はこのお話の絵本に加えて、
有機農法に取り組む農家や
魚への予防接種によって抗生物質の投与を減らすことに成功した水産業者、
そして、食育に取り組む保育園の園長先生、という
3名のインタビューと写真から構成されています。

いろいろと教えられます。

お子さんのいる家庭にかぎらず、一家に一冊どうぞ。


(西日本新聞社2009年1,200円+税)

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2013年5月29日 (水)

室谷克実『悪韓論』

これはまたストレートなタイトルの本ですが、読んでみると確かに驚くべきことだらけの内容でした。ここで具体的に書くのは控えておきますが。

へぇー、そうだったんだ。

何しろ情報源は現地の朝鮮日報や中央日報のようなれっきとしたマスコミの報道ですから、信じないわけにはいきません。

同胞への警告でも日本人に読ませたくない内容は、翻訳に規制をかけると同時に、わが国のマスコミも遠慮して報じないというのが実情のようです。

著者にはソウル特派員時代からこの種の記事を徹底的にフォローしてきたという強みがあります。

かの西村議員の「暴言」の元ネタもおそらく本書だったんでしょう。

それにしても、時と場所をわきまえないと逆効果になっちゃう発言でした。あえて狙っていたのかもしれませんが。

いろんな意味で勉強になります。

(新潮新書2013年720円税別)

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2013年5月28日 (火)

山崎亮+NHK「東北発☆未来塾」制作班『まちの幸福論コミュニティデザインから考える』

コミュニティデザインというのは今ひとつよくわかりませんが、本書を読んで、少しだけ理解できた気がします。

地域おこし、町おこしということで言えば、とにかく地元の人びとと、とことん話をすることが大切だと言うことは確かです。結局住民が中心にならないとどんなに派手なイベントを成功させても打ち上げ花火で終わっちゃいますから。

それと、直接には関係ないことですが、本書と平行して収録された番組の中で、学生を集めてブレインストーミングさせたりする仕方は授業でも使えそうで、参考になりました。

学生は学生で知識も経験も乏しいので、これはこれで大変だろうなと思いますが、地元の人びとと問題を共有しながらいい知恵を出し合うというのは得難い経験になることでしょう。

と、つい教育効果を考えてしまいますが、住んでいる人たちもまた素朴で素直な人たちばかりでないのは都会人と変わらないので、美しい話ばかりではありません。

それから、都会も再開発の中で高齢化とともにゴーストタウン化し、買い物難民が出たりし始めていますので、話は田舎とか中山間地だけにとどまらない時代に入りつつあります。

これからも何かのときに再びひもとくことになりそうな本です。

(NHK出版2012年1,300円+税)

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2013年5月26日 (日)

山岸俊男『日本の「安心」はなぜ消えたのか』

著者の本は時系列に沿って読んでいくと、一つの問題が次々と展開されて説得力を増していくことがわかり、感心させられます。

本書では、日本人が伝統的集団生活の中で「安心」を確保する行動様式を身につけてきたという事情が、心理実験の結果もふまえながら語られます。

その点では一般的な通念とは異なり、アメリカ人と比べてみると、日本人は個人主義的で、他人を信頼しないという傾向が見えたりします。言われてみるとなるほどです。日本の集団主義社会はそもそも「信頼」を必要としなかったからです。

このままでよければ幸せなのですが、著者はこれから日本も「信頼」を軸とした社会に移行せざるをないとみていて、そのための処方箋をいろいろとて提案してくれます。

他人が信頼できるかどうかを感知する能力は、実は日本人にも備わっているので、そのあたり、制度設計とあわせて正直者が得をする社会にしていくことは、本書を読むとできそうな気がしてきます。

ただ、著者はわが国の旧来の「安心社会」の倫理と「信頼社会」の倫理が混合してしまうと危険だとも警告しています。具体的には、安心社会の倫理を代表する武士道精神が、信頼社会に移行中のわが国で強調されるのはいたずらに混乱を引き起こすだけいにとどまらないほどマズいということがわかります。

日本人としての「心の教育」をすればするほど、ただ乗りの利己主義者ばかりの社会が出来上がってしまうというジレンマというか、パラドックスに落ち込んでしまうのです。このあたりの理路は本書をお読みください。社会心理学のキモでもあります。

実際、日本にも商人道徳という信頼社会の倫理があるのですが、最近はあまり旗色がよくないと著者は感じているようです。そうやっていわれてみると、特に本書が出た頃は武士道とか品格の本がベストセラーになっていましたからね。

そういえば、清水義典の『スシと忍者』(講談社文庫)にも、これと同様ですが、作家独自の考察が示されていたのを思い出しました。結論は少し異なっていたかもしれませんが、問題の捉え方はさすがだと思います。全編笑える長編小説でしたが、もう一度読んでみましょうか。

(集英社2008年1600円+税)

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2013年5月24日 (金)

池谷裕二『脳には妙なクセがある』

脳科学の最新の知見をわかりやすく紹介してくれる好著です。脳科学や心理学の実験結果がたくさん紹介してありますが、なんと英語の文献注だけで207を数えるのには驚かされました。

普通はこれだけ文献が出てくると固い学術論文集みたいな語り口になりそうですが、本書に限らず、著者が書くものはいつもわかりやすく親切です。

脳科学の発見で私が驚かされたのは、

・脳に絶対価値を推量する回路があること
・人間の幸福感は20歳で大きく落ち込み、40〜50歳代前半頃が底で、老年期に向けて上昇するというU字曲線を描く
・問題解決には(未知の問題でも)話し合う方が正解率が上昇する
・マイコプラズマという細菌は化学合成で作ることができる
・側頭葉に磁気刺激を加えると「神」や亡霊が見える
・頭頂葉の「角回」を刺激すると、いわゆる幽体離脱が起こる

というところです。

著者は「一見抽象的にも思えるヒトの高度な思考は、身体の運動から派生している」(314頁)と考えています。最初は身体を通じて行っていた行動を、次第に身体なしで近道をとることができるようになるのが脳の働きで、「ヒトの心理作用の多くは身体性を下地としている」(320頁)と言います。

それで、著者は「よい経験」を積むことの重要性を強調するわけです。
「よい経験をしたら、後は脳の自動的な反射に任せておくだけーーこれほど前向きで、健全な生き方が他にあるでしょうか」(271頁)

なるほど、このあたりはアランの『幸福論』を思い起こさせます。アランが「身体に訊け」ってなことを言っていたのは、脳科学的にも正しかったようです。

(2012年扶桑社1600円+税)

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2013年5月23日 (木)

日下公人『日本既成権力者の崩壊』

昨日読んだ本と同じ頃に出たものなので、重なるところもありますが、本書では、トリウム熔融塩炉による発電の可能性などが具体的に書かれています。

地下1000メートルに原子炉を作るという案は安全性についても考えぬかれていて、なかなかのものだと思います。

マスコミが遠慮して取り上げないホルミシス効果についてもきっちり書かれていて勉強になります。科学の成果はせいかとして、まずは事実として承知しておかなければお話になりません。その上でどういう政策をとるかということですね。

また本書では「行政手続法」が故盛田昭夫氏の主導で作られたことにも触れられていて(83頁以降)、そうやって条文を読んでみると、味わい深いものがあることがわかりました。

それから「セレンディピティ」(いわゆる「ひらめき」のことです)についても著者が学んだ自由学園の思い出とともに説得的に語られます。

著者の情報収集力と、独特のひらめきにはいつも驚かされますが、単純な偏差値教育を受けてきた人でないことが幸いしているんでしょう。

著者が提言する頭の使い方は以下のとおりです(42頁)。

・教科書の知識よりも実体験で得た知恵が役に立つ
・自由な勉強態度が大事である
・一つの問題について縦から横から考える癖を付ける
・自分の手作りの情報が貴重である
・知識や理論は必要になった時に自分で学べばいい
・権威に左右されてはいけない
・教条主義者になってはいけない
・友人との会話は貴重である
・放心の時間も重要である
・雑情報の中に砂金の粒がある
・閃きのためのセレンディピティを身に付ける
著者はもう83歳になるはずですが、衰えを微塵も感じさせないところがすごいです。

(李白社2012年1,500円+税)

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2013年5月21日 (火)

日下公人『「超先進国」日本が世界を導く』

昨年出た本ですが、今読んでも古くなっていません。十分参考になります。昨年の出来事も振り返ることができていいです。

いつもながら、他の論者が決して指摘しないことがたくさん書かれています。ここでもそのいくつかを挙げてみます。

・アメリカには中世がなくて「いきなり古代ギリシアに自分たちの文明・文化の根拠を求めた。中世に価値を認めるとヨーロッパを捨てた自分たちを否定することになってしまうからである」(58頁)

・旧日本陸軍の『作戦要務令』には、指揮の要訣として「部下指揮官に対し、多いに独断活用の余地を与うるに在り」と出ています。指揮官には部下の判断を尊重し、その裁量に委ねる柔軟さが求められていました。

・「上に立つ者の責任とは、任せられるに足る人物を探すことであり、育成することである。そして、いよいよ任せたら口出しせずに、結果が悪かったら『彼を選んだのは私ですので、責任は私にあります」と、上に立つ者の『責任』をきちんと取ることである」(121頁)

いろいろと考えさせられます。この最後の引用は、本書に出てくる震災当時の菅首相をはじめとして、今日にいたっても上つ方から下々まで責任を逃れることだけがは巧みなリーダーばかりですので、なおさらそうです。

ほんと驚くほど責任というものをとらないんです。「責任は感じる」くらいまでは言うんですけどね。

(PHP研究所2012年1500円税別)

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2013年5月20日 (月)

西加奈子『白いしるし』

帯に「極上の失恋小説」と書かれていましたが、本当にそうでした。これほど熱烈な恋の一部始終が、とことん深くかつ爽快に描かれているとは思いませんでした。
ネタバレになってはいけないので詳しくは書きませんが、著者の小説らしく最後にスピード感のあるカタルシスも用意されていて、主人公をしっかり救ってくれます。読後にいい余韻がいつまでも残る感じです。
他の登場人物二人のそれぞれのこれまた辛い恋愛も実にうまく織り込まれていて、唸らされました。あざとい感じにならないところも見事です。
そうそう、昔、女友だちが、こんな痛々しい恋愛をしていた記憶が蘇って来ました。最近ご無沙汰していますが、わざわざ連絡をとって、この小説を勧めるのはやっぱり罪でしょうか。それともむしろいいことなのでしょうか。
まあ、迷うくらいなら何もしないほうがいいとタレブが言っていましたから、その言葉に従うことにしますが、実はもうとっくに読んでいたりするのかもしれません。
それにしても、つくづくすごい作家だと思います。新作の『ふる』も読まなくでは。
(新潮社2010年1300円税別)

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2013年5月16日 (木)

西加奈子『窓の魚』

壊れかけた登場人物4人の痛々しい恋愛が、それぞれの視点から語られます。作家はこの登場人物の若者たちをそれぞれに大切に、丁寧に、そして、愛おしみながらも深くえぐるように描き出しています。

これに連なる作品は著者の『地下の鳩』でしょうか。谷六のエグい世界から出てきたような若者たちも4人中2人います。しかし、作者の描き方おかげで、これからはホストや風俗嬢のようなカップルを見かけても、背後にこんな物語を引きずっているのかもなんて思うかもしれません。

この作品も、この作家の小説らしく、言葉でここまで表現できるのかという新鮮な驚きがあります。いつも、どこかで読んだことのあるような小説には決してなりません。「うんうん、あるよね」ではなくて、魂に触れてくる驚きがあります。
文庫のカバーの裏表紙にあらすじのようなことが書かれていて、それを読む限り、何となく今まで避けていましたが、やっぱり読んでよかったです。

いや、ほんと、深くていい余韻の残る小説なのです。ふーんとかヘーとか言いながら、あるいはほーっとため息をつきながら、今晩は安らかに眠れそうです。

この作家には将来ノーベル文学賞をとってほしいですね。

(新潮文庫平成23年400円+税)

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2013年5月15日 (水)

山岸俊男『社会的ジレンマ 「環境破壊」から「いじめ」まで』

以前読んだ本です。もう一度参照したいと思って自分の本棚を探しましたが、ずっと行方不明になっていました。

授業に使わなきゃと思って本腰を入れて探しても見つからず、本棚は整理されたものの、これは買い直しかなと思っていたら、家内の本棚から出て来ました。うーん、これはいくら探しても見つからなかったはずです。

それはそうと、改めて読みなおしてみましたが、やっぱり名著ですね。特に、応報戦略を超える直感的な判断の有効性について、ご自身の説の撤回も含めて、誠実に描写されている点が、すごいなと思いました。

著者のようにメジャーな学者の中には「自分は昔から天才だった。それも生まれたときから」みたいなことを言いたがる人がありますが、そういう俗物根性と無縁なところが素晴らしいです。また、そうした素直さが、著者の国際的にも評価の高い諸業績につながっているのでしょうね。

社会心理学に無縁の人にもおすすめできる分かりやすさと、十分な知的刺激を兼ね備えた本です。

来週、本書を題材にして、社会的ジレンマや限界質量の問題を学生たちと一緒に考えてみたいと思っています。

(PHP新書2000年660円税別)

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2013年5月14日 (火)

角田光代『トリップ』

東京近郊の私鉄沿線の街に自分を持て余しながら悶々と暮らしている人びとが登場する連作短編集です。10編で10人、それぞれが少しずつ関係しています。

最後の一編を除いて、みんな自分がここにいるべきでないと感じながら、かといって他に行くでもなく、現実から妄想・妄念の世界へとトリップしそうになりながら(最後の一編は本当に海外に行ってしまっているのですが)、何となくそこに居続けています。

中三の娘が本書の最初の短編を読んで、後は読む気がしなくなったと言って投げ出したので、その後を受けて読んでみましたが、確かに中学生には読み通すのがつらいだろうなと思いました。

これが東京などのませた中学生だったら、また違うかもしれません。田舎でのんびりした暮らしをしていると、このような東京近郊の空気はわからないでしょうしね。私は学生時代に住んでいた江古田あたりをついつい思い浮かべてしまいましたが、作品の舞台はどうやらもっと都心から離れたところのようですね。

それにしても、登場人物たちのやるせない感じは身につまされます。昔観たフェリーニの映画『甘い生活』の「苦さ」を思い出しました。しかし、それよりももっとずっとどん詰まりの感じがするのは作家の筆力が半端でないからでしょう。よくここまで書けるなあと感心します。

文章も構成も抜群にうまい作家だと思います。ただ、個人的には、同じような連作短編だったら、奥田英朗の『ララピポ』の方がどこか軽くて好みです。

(光文社文庫2007年495円+税)

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2013年5月10日 (金)

沢木耕太郎『キャパの十字架』

昔ハンガリーに留学していたとき、著者の訳したウィーラン『キャパ、その愛と死』を読んだことがあります。このときの記憶が変成してしまい、本書を読み始めるまで、その訳書が著者の本だと思い込んでいました。

で、そのときのこれまた変成した記憶から、キャパの「崩れ落ちる兵士」という写真が戦場で撃たれた時の写真ではなくて、演技してもらったものを撮ったことについてはまず間違いないだろうと勝手に思っていました。

しかし、それは、原著者のウィーランの疑念の一つに過ぎず、原著者本人が否定していたんですね。

で、そのときの翻訳者であった沢木耕太郎氏は、この20年以上、この疑問にこだわり続け、現地あるいはニューヨークやパリを何度も訪れ、ついに一連の説得的な仮設に到達したのが本書というわけです。

すごいです。ここには新たな幾つものドラマが含まれています。ネタバレになっては申し訳ないので書きませんが、書名通り、キャパは重たい十字架を背負っていたんですね。

すばらしい。お勧めです。

(文藝春秋2013年1500円+税)

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2013年5月 9日 (木)

ナシーム・ニコラス・タレブ『まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか』

タレブのエキセントリックなノリは『ブラック・スワン』に先立つ本書ですでに全開だったんですね。最初から思いっきり飛ばしています。

本書はウォール街のトレーダーたちの生き方も活写されていて、この恐ろしい環境の中で、タレブの人生観と思想が培われてきたことがよくわかります。

たとえば、7年間勝ち続けたあとの1週間ですべてを失うトレーダーの勝ちが、偶然の積み重ねだったに過ぎなかったりする様子が、おそらくは架空の登場人物について語る手法で描かれます。

人間の愚かさの見本市ですが、自分もまた例外でないことをタレブは本当によくわかっているから、こんな本が書けるんですね。

細部のエピソードや言及されている本も参考になります。

本の最後に、「どんなときでも、sapere vivereの(「人生を悟った」)態度を示すのだ」(301頁)という序言は、偶然性を格闘してきた著者ならではの言葉で、説得力があります。

「レイディ・フォルトゥナ[運命の女神]の意のままにならないのは、たった一つ、あなたの振る舞いだけだ。幸運を祈る」(同頁)

(望月衛訳ダイヤモンド社2008年2000円+税)

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2013年5月 5日 (日)

ナシーム・ニコラス・タレブ『ブラック・スワンの箴言 合理的思考の罠を嗤う392の言葉』』

タレブらしい箴言集です。
生真面目な人は読まない方がいいかもしれません。
箴言集なので、いつどこから読み始めてもOKです。
いろいろなことが読み取れる箴言ですが、
ここではよけいな感想は言わずに、
私が気に入ったものを7つだけ挙げておきましょう。

・人が褒め言葉を使うのは自分のプライドを脅かさない相手だけである。それ以外の相手を褒めるときはだいたい、「えらそうに」なんて言葉を使う。

・幸せについてのカンファレンスに行ってきた。研究者たちはとても不幸せそうだった。

・明晰な頭は勇気の申し子だ、逆ではない。

・二つのうちどちらを選ぶか迷ったらどちらも選ぶな。

・カモは、お金で欲は収まる、薬物で中毒は治る、専門家で専門家の問題は解決できる、銀行員がいれば銀行商売ができる、経済学者がいれば経済がわかる、そして、お金を借りて浪費すれば債務危機が終わると思っている。

・有能な人たちがいいことをしようとして最悪の被害をもたらしてきた。無能な人たちがいいことをしようとせずに最高の改善をもたらしてきた。

・私が尊敬するのは、ヒトモドキどもが世間の目を気にして小さくなっているときに、立ち上がれるだけの知識と勇気を持つ、そんな人である。小賢しいだけならバカでもなれる。

全編こんな感じです。勇気を与えられて、気合いが入ってくる本です。

(ダイヤモンド社2011年1,500円+税)

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2013年5月 3日 (金)

島田裕巳『宗教はなぜ必要なのか』

宗教音痴の日本人に向けて、宗教とはどんなもので、なぜ必要なのかということを、丁寧に解説してくれるありがたい本です。

死生観、宗教体験、ご利益、モラル、究極の親としての神という五つの視点から、各宗教間の相違が語られますが、宗教美術や文学、歴史などにわたる著者の該博な知識にも教えられることが多く、勉強になります。

日本人の無宗教的態度については「日本の共同体の倫理は、宗教の倫理と同じ働きをしています」(143頁)とのことで、「日本には、日本人だけが信じ、実践している日本教という宗教が存在する」という指摘は確かにそのとおりで、

「そうした日本教という隠れた宗教があるからこそ、日本人は一見、宗教なしに倫理や道徳を確立しているように見えてくるのです」(同頁)

ほんと、そうですよね。外国人はみんなここのところを不思議に思っていますもんね。

さらにこの著者の指摘はそれだけにとどまらず、この日本教の場合、(唯一絶対者の一神教と違って)「自らが究極の親としての神」にならざるをえず、祖先崇拝という形の中で、「自分自身が神となることで、絶対的は存在にすがらないでもすむ社会を作り上げてきた」(169頁)と言います。

なるほど、日本人は自分の心の中に絶対者をくくり込んでいるとは思っていましたが(山本七平の指摘などにより)、祖先崇拝が自ら神になることを含んでいたとは気がつきませんでした。この見方を教えてくれたことについて、著者に感謝したいと思います。

これは授業でも紹介しなければ。

(集英社インターナショナル2012年1000円+税)

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2013年5月 2日 (木)

亀田達也・村田光二著『複雑さに挑む社会心理学[改訂版] 適応エージェントとしての人間』

社会心理学の教科書のスタンダードな体裁をとらず、この学問自体を鳥瞰する視点に立って各トピックを大胆に編成しなおした本です。

これまでの教科書は、人間の様々な社会行動を分析する社会実験とともに総花的に羅列するところがありましたが、個々の社会行動同士のつながりは、極端にいえばアメリカの教科書の目次にそっている以外のものは示されていなかったように思われます。

著者たちはこれに対して、環境に適応する行為者としての人間を柱にして(適応エージェント)、しかし、個人レベルと社会レベルでの出来事の現れ方の違いを意識しつつ(マイクローミクロ関係)、社会行動を統一的かつ実証的に理解する視点を提供しています。

そう言うと難しく聞こえますが、要は、社会行動についての統一したものの見方を提示しているということです。そして、明快な記述で読みやすい教科書になっています。

個々の実験や研究成果も改訂で近年のものが取り入れられていて、学会の現状が文献情報とともにきっちりとフォローされているのがありがたいです。

個人的には進化心理学的アプローチを推し進めている諸研究について少し立ち入ってフォローしておきたいこともあり、文献情報がありがたかったです。

これも学生に勧めておこうと思います。

(有斐閣アルマ2010年1900円+税)

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