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2013年5月24日 (金)

池谷裕二『脳には妙なクセがある』

脳科学の最新の知見をわかりやすく紹介してくれる好著です。脳科学や心理学の実験結果がたくさん紹介してありますが、なんと英語の文献注だけで207を数えるのには驚かされました。

普通はこれだけ文献が出てくると固い学術論文集みたいな語り口になりそうですが、本書に限らず、著者が書くものはいつもわかりやすく親切です。

脳科学の発見で私が驚かされたのは、

・脳に絶対価値を推量する回路があること
・人間の幸福感は20歳で大きく落ち込み、40〜50歳代前半頃が底で、老年期に向けて上昇するというU字曲線を描く
・問題解決には(未知の問題でも)話し合う方が正解率が上昇する
・マイコプラズマという細菌は化学合成で作ることができる
・側頭葉に磁気刺激を加えると「神」や亡霊が見える
・頭頂葉の「角回」を刺激すると、いわゆる幽体離脱が起こる

というところです。

著者は「一見抽象的にも思えるヒトの高度な思考は、身体の運動から派生している」(314頁)と考えています。最初は身体を通じて行っていた行動を、次第に身体なしで近道をとることができるようになるのが脳の働きで、「ヒトの心理作用の多くは身体性を下地としている」(320頁)と言います。

それで、著者は「よい経験」を積むことの重要性を強調するわけです。
「よい経験をしたら、後は脳の自動的な反射に任せておくだけーーこれほど前向きで、健全な生き方が他にあるでしょうか」(271頁)

なるほど、このあたりはアランの『幸福論』を思い起こさせます。アランが「身体に訊け」ってなことを言っていたのは、脳科学的にも正しかったようです。

(2012年扶桑社1600円+税)

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