沢木耕太郎『キャパの十字架』
昔ハンガリーに留学していたとき、著者の訳したウィーラン『キャパ、その愛と死』を読んだことがあります。このときの記憶が変成してしまい、本書を読み始めるまで、その訳書が著者の本だと思い込んでいました。
で、そのときのこれまた変成した記憶から、キャパの「崩れ落ちる兵士」という写真が戦場で撃たれた時の写真ではなくて、演技してもらったものを撮ったことについてはまず間違いないだろうと勝手に思っていました。
しかし、それは、原著者のウィーランの疑念の一つに過ぎず、原著者本人が否定していたんですね。
で、そのときの翻訳者であった沢木耕太郎氏は、この20年以上、この疑問にこだわり続け、現地あるいはニューヨークやパリを何度も訪れ、ついに一連の説得的な仮設に到達したのが本書というわけです。
すごいです。ここには新たな幾つものドラマが含まれています。ネタバレになっては申し訳ないので書きませんが、書名通り、キャパは重たい十字架を背負っていたんですね。
すばらしい。お勧めです。
(文藝春秋2013年1500円+税)
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