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2013年5月 3日 (金)

島田裕巳『宗教はなぜ必要なのか』

宗教音痴の日本人に向けて、宗教とはどんなもので、なぜ必要なのかということを、丁寧に解説してくれるありがたい本です。

死生観、宗教体験、ご利益、モラル、究極の親としての神という五つの視点から、各宗教間の相違が語られますが、宗教美術や文学、歴史などにわたる著者の該博な知識にも教えられることが多く、勉強になります。

日本人の無宗教的態度については「日本の共同体の倫理は、宗教の倫理と同じ働きをしています」(143頁)とのことで、「日本には、日本人だけが信じ、実践している日本教という宗教が存在する」という指摘は確かにそのとおりで、

「そうした日本教という隠れた宗教があるからこそ、日本人は一見、宗教なしに倫理や道徳を確立しているように見えてくるのです」(同頁)

ほんと、そうですよね。外国人はみんなここのところを不思議に思っていますもんね。

さらにこの著者の指摘はそれだけにとどまらず、この日本教の場合、(唯一絶対者の一神教と違って)「自らが究極の親としての神」にならざるをえず、祖先崇拝という形の中で、「自分自身が神となることで、絶対的は存在にすがらないでもすむ社会を作り上げてきた」(169頁)と言います。

なるほど、日本人は自分の心の中に絶対者をくくり込んでいるとは思っていましたが(山本七平の指摘などにより)、祖先崇拝が自ら神になることを含んでいたとは気がつきませんでした。この見方を教えてくれたことについて、著者に感謝したいと思います。

これは授業でも紹介しなければ。

(集英社インターナショナル2012年1000円+税)

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