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2013年5月16日 (木)

西加奈子『窓の魚』

壊れかけた登場人物4人の痛々しい恋愛が、それぞれの視点から語られます。作家はこの登場人物の若者たちをそれぞれに大切に、丁寧に、そして、愛おしみながらも深くえぐるように描き出しています。

これに連なる作品は著者の『地下の鳩』でしょうか。谷六のエグい世界から出てきたような若者たちも4人中2人います。しかし、作者の描き方おかげで、これからはホストや風俗嬢のようなカップルを見かけても、背後にこんな物語を引きずっているのかもなんて思うかもしれません。

この作品も、この作家の小説らしく、言葉でここまで表現できるのかという新鮮な驚きがあります。いつも、どこかで読んだことのあるような小説には決してなりません。「うんうん、あるよね」ではなくて、魂に触れてくる驚きがあります。
文庫のカバーの裏表紙にあらすじのようなことが書かれていて、それを読む限り、何となく今まで避けていましたが、やっぱり読んでよかったです。

いや、ほんと、深くていい余韻の残る小説なのです。ふーんとかヘーとか言いながら、あるいはほーっとため息をつきながら、今晩は安らかに眠れそうです。

この作家には将来ノーベル文学賞をとってほしいですね。

(新潮文庫平成23年400円+税)

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