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2013年5月14日 (火)

角田光代『トリップ』

東京近郊の私鉄沿線の街に自分を持て余しながら悶々と暮らしている人びとが登場する連作短編集です。10編で10人、それぞれが少しずつ関係しています。

最後の一編を除いて、みんな自分がここにいるべきでないと感じながら、かといって他に行くでもなく、現実から妄想・妄念の世界へとトリップしそうになりながら(最後の一編は本当に海外に行ってしまっているのですが)、何となくそこに居続けています。

中三の娘が本書の最初の短編を読んで、後は読む気がしなくなったと言って投げ出したので、その後を受けて読んでみましたが、確かに中学生には読み通すのがつらいだろうなと思いました。

これが東京などのませた中学生だったら、また違うかもしれません。田舎でのんびりした暮らしをしていると、このような東京近郊の空気はわからないでしょうしね。私は学生時代に住んでいた江古田あたりをついつい思い浮かべてしまいましたが、作品の舞台はどうやらもっと都心から離れたところのようですね。

それにしても、登場人物たちのやるせない感じは身につまされます。昔観たフェリーニの映画『甘い生活』の「苦さ」を思い出しました。しかし、それよりももっとずっとどん詰まりの感じがするのは作家の筆力が半端でないからでしょう。よくここまで書けるなあと感心します。

文章も構成も抜群にうまい作家だと思います。ただ、個人的には、同じような連作短編だったら、奥田英朗の『ララピポ』の方がどこか軽くて好みです。

(光文社文庫2007年495円+税)

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