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2013年6月19日 (水)

木村敏『生命のかたち/かたちの生命』

本棚を眺めていたら、本書を発見。2005年の第3版で、一度は読んでいるはずの本ですが、読んだことをすっかり忘れていたので、再読。付箋まで貼ってあったんですけど、内容はすっかり忘れていました。

再読したら新しい発見があり、新たに付箋を貼りましたが、また何年かしたら忘れてしまうでしょうか。いずれにせよ、今回は印象に残った箇所をしっかりブログに書いておくことにします。

精神医学の対象というのは、普通の物理的現象のようにさしあたりこれ、と決めてしまうことができません。それだけに、観察の主体と客体の問題を常に原理的に考察しなければならないため、話題が哲学的になる傾向があります。

かつて、やはり精神医学者の安永浩さんがウォーコップに注目された理由もよくわかります(『講座 精神の科学3』岩波書店1985年、あるいは『精神の幾何学』)。

その結果、精神医学と同様に学問的対象を特定しづらい社会学や心理学にとっても有益な、そして、哲学や思想に興味のある一般読者にとってもわくわくさせられる、優れたテクストが残されることになります。

ことに最近社会心理学の理論的裏付けについて考えていることもあって、本書は多くの手がかりを与えてくれます。

著者は、ヴァイツゼッカーの「根拠関係」(その根拠自体が認識対象となり得ないような依存関係)の概念を手がかりに、こう述べています。

「生きているものを研究するために生命と関わりあうということは、われわれ自身が行為者として、行為しながら、行為そのものに内在する感覚でもって生きものを「見る」ということにほかならない。外界の光を媒体としてみるのではなく、われわれ自身の動きを媒体としてみるということである。そしてそれは同時に、研究対象をその生命から切り離して客観的に考察するのではなく、対象自身が行為し感覚しながら生きている生命活動そのものに照準を合わせてこれを見るということでもある。一言で言えば、行為主体としてのわれわれの自身が行為主体としての生き物に行為的に関わるということだ」(20頁)

ちょっと引用が長くなりましたが、こういう感じで著者はいつも曰く言いがたいことを言い当てるようなところがあります。綿密な思考とリズムを兼ね備えた絶妙な表現力が魅力です。

それはそうと「根拠関係」が気になるので、これからヴァイツゼッカーの『ゲシュタルトクライス』も読みなおしてみます。

(青土社2005年[初版1992年]1800円税別)

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