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2013年6月13日 (木)

笹山尚人『人が壊れてゆく職場 自分を守るために何が必要か』

著者は労働問題を専門に扱う弁護士です。その誠実で熱い姿勢が印象的な本です。

著者は言います。

「労基法は、どんなに非力な使用者であっても、人を雇う以上はこれくらいのことは守れるはずだということを前提に制定されている。だが、この労基法の内容をきちんと守っている職場に、私はほとんどお目にかかったことがない。そして、そのことを指摘すると『法律をいちいち守っていたら、経営なんてできませんよ』と開き直る使用者も多い」(216頁)

これ、わかります。他人事ではありません。身につまされるくらいよくわかります。

実際、この趨勢は著者が労働事件を担当してからこの方ずっと変化していないことだそうです。

他方で、労働者の生活の困窮の程度は非正規雇用者を中心に、明らかにひどさを増していると言います。

どうやら事態は経団連の要望とそれを受けた政府の政策どおりに進んでいるようです。

これはデフレになるはずです。本書とは直接の関係はありませんが、デフレ賃下げ原因説の情況証拠にもなります。

著者は自分を守るためには「法に定める権利の実現」をストレートに追求することを勧めます。手段としては交渉や裁判、それから労働組合として団結することというオーソドックスなものですが、本書ではその力が効果的に発揮された事例をいくつもとりあげてくれていて、参考になります。

非正規雇用の労働者でも「首都圏青年ユニオン」のような組合に加入することができ、実際に成果が上がっています。

最後にもう一つ引用しておきます。
「労働法について学び、現実の労働事件で多くの労働者が、使用者の勝手で違法な行為に苦しめられているところを毎日見ている私の立場からすると、『まともな労働組合』というのは切望する存在である。また、そういう労働組合とのつきあいは実に清々しく、楽しい。そして、そういう組合は実は結構多い。しかし、それは世の中の一般的潮流とはなっておらず、多くの人が労働組合の良さを知らないことは、日本にとって大きな不幸の一つだと私は思っている」(170頁)

同感です。私も今加入している組合がそういう組織になるよう尽力していくつもりです。

(光文社新書2008年760円+税)

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