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2013年7月15日 (月)

ひろさちや『阿呆の知恵』

『阿呆の知恵」とは、弱肉強食の修羅の巷で競争から降りる心得のことです。

著者は基本的に仏教の立場から読者に平易に語りかけてくれますが、仏教の過激さもしっかり伝えてくれています。

たとえば、船が難破して、一人の男が船板につかまっているところに、もう一人の男が泳いで来たものの、船板が小さくて二人一緒につかまることができないという限界状況(「カルネアデスの船板」)に至ったときの宗教的な答えとして、著者は「二人とも死になさい」(150頁)と言います。

お互いに譲り合って「二人がともに死んで、あとに船板がぽつんと残っている。そういう光景を仏教は理想とします」(151頁)

なるほど。これならお互いに後悔は残りません。

宗教はこうでなくちゃ。

われわれは極楽からちょっと遊びに来た観音様だという考えも素敵です(182頁)。
「あなたの父や母が観音様です。そして、あなたの子どもが観音様。あなたの兄弟姉妹が観音様。あなたの友人が観音様。あなたの大嫌いな人が観音様です」(186頁)

「そして、あなた自身が観音菩薩」(同頁)

で、どうすればいいかというと、
「要するに『阿呆』になることです。『阿呆』というのは、貧乏であれば、貧乏な観音様になれる人、金持ちであれば金持ちの観音様になれる人です。貧乏なくせに金持ちになりたいと思っている人、金持ちのくせに将来貧乏人に転落するかもしれないと心配している人は、観音様でもないし『阿呆』でもありません」(219頁)

私自身、いつのまにか娑婆で競争原理になじまされているので、ときどき著者の本を読んでは、自分の要らぬこだわりを解きほぐしてもらう必要があるようです。

(角川書店2013年781円税別)

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