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2013年7月23日 (火)

立川談志(聞き手・吉川潮)『人生、成り行き ー談志一代記ー』

談志の語り口が懐かしいです。本書では副題のとおり、生涯を振り返ってくれています。

おかげで落語界の勢力地図と協会分裂騒動の流れも、政界へ打って出たときの事情もよくわかりました。

とにかく何でも面白がっちゃおうというところがすごいです。選挙についてもこんな具合です。

「一回目の選挙は負けて終わりましたけど、本当に、しばらくは何をやっても詰まらないと思った。博打をやろうが、丸裸の女に囲まれようが、麻雀を打とうが、選挙にはかなわんでしょうなア。あたしは金がなかったけど、普通は金を使って、体力、知力すべてをフル動員して一票差で明暗がわかれる。選挙は面白いとしか言いようがないんじゃないですか」(131頁)

なるほどそうなんですね。こんなふうに言ってくれる人がいると、政治が身近に感じられる気もします。今回の参院選で当選した議員諸兄姉もきっとこの面白さを感じていることでしょうけれど、このことを正直に有権者に伝えることができる人はおそらくほとんどいないんじゃないでしょうか。投票率、低いですしね。

政治の世界を経ることで、談志は芸に開眼したといいます。

「ここで、〈芸〉はうまい/まずい、面白い/面白くない、などではなくて、その演者の人間性、パーソナリティ、存在をいかに出すかなんだと気がついた。少なくも、それが現代における芸、だと思ったんです。いや現代と言わずとも、パーソナリティに作品は負けるんです」(181頁)

味わい深い言葉です。あのちょっと困ったような顔をしながら周到に気を使った言葉を紡ぎだす語り口は、こういうことを意識しながらのものだったんですね。

一家に一冊どうぞ。

(新潮文庫2012年438円税別)

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