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2013年7月19日 (金)

笹山尚人『それ、パワハラです ― 何がアウトで、何がセーフか』

いい本でした。著者の『人が壊れてゆく職場』以降の生々しい事例が収録されています。著者は言います。

「私はこれまで、数々のパワハラ事件を見て来た。世の中には、信じられないくらい下劣で、ひどい言葉を他人に平気で浴びせる例が数多く存在する」(34−35頁)

そうなんですよね。そうしたパワハラの加害者がどんどん出世して行ったりしても何も不思議ではありません。そうした連中に限って、上には覚えがまことにめでたかったりするからです。

パワハラにセクハラ(大学ではアカハラも)、それに間接的で陰湿な嫌がらせを加えると、その件数は全国的にはとんでもない数に上ることが想像されます。

ガットとかピンカーとかダイアモンドの研究によれば、人類は原始時代には殺人によって人口の四分の一が亡くなっていたそうですが、直接手を下すことはしなくても、その頃からの心性は実は何も変わっていないのかもしれません。

本書ではパワハラに遭遇したときの具体的な心がけと方策もしっかり書かれています。とりわけ、ICレコーダーなんかはもはや常時ポケットに忍ばせておいたほうがよさそうです。先方の承諾などははっきりと「気にしなくていい」と言ってくれています(177頁)。

労働組合の活用も勧めてくれています。今日組織率は下がってきていても、実は重要性を増していますね。うちの組合にもどうぞいつでもお入りください。

また著者は「労働法をきちんと活用することが、この問題を根絶する一つの手段として貢献できる」(202頁)ということも強調されています。

実際、前著にもありましたが「労働法をきちんと定着させていない職場は、残念ながら、まだまだ多い。これまで述べてきたように、労働法には、労働者の人格権を保護しようという内容が含まれている。労働法が職場に根づいていないということは、労働者の人格権を大事にしようという思想が職場に根づいていないということである」(同頁)

事態はまだまだ旧態依然のようです。ただ、本書にあるように、裁判だけでなく、比較的新しい制度である労働審判制度を活用するのはかなり有効な手段だと思います。カードの一つとして考えておきます。

(光文社新書2012年740円+税)

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