カール・マルクス『共産主義者宣言』金塚貞文訳・柄谷行人付論
昔岩波文庫の『共産党宣言』を読んだときには戦闘的で結構えげつない語り口のアジテーションだと思った記憶がありますが、思えばそれも30年以上前のことです。
しかし、こうして新訳をあらためて読んでみると、戦闘的な語り口についての印象は相変わらずですが、グローバル資本主義の分析に意を尽くしていたマルクスの先駆的な意図が読み取れて、なかなか興味深いものがありました。
もちろん『資本論』なんかまったくもってそういう本なのですが、この小著にもその特徴が色濃く出ています。
次の引用なんかは「ブルジョア階級」を「グローバル資本主義」に置き換えるとわかりやすいと思います。
「ブルジョア階級は、すべての生産用具の急速な改良によって、限りなく容易になった交通によって、あらゆる民族を、どんな未開な民族をも、文明の中に引き入れる。かれらの廉価な商品は、それをもってすれば、万里の長城も破壊し、未開人のどんなに頑固な外国人嫌いも降伏させることjのできる大砲である。かれらはすべての民族に、存続と引き換えに、ブルジョア階級の生産様式の採用を強制する。かれらはすべての民族に、いわゆる文明を自国に輸入することを、すなわち、ブルジョア階級になることを強制する。一言でいえば、ブルジョア階級は、かれら自身の姿に似せて世界を創造するのだ」(20頁)
扇情的で自分以外の人間はみんなバカだと言わんばかりの(言いたかったのだと思いますが)マルクスの文体はいつ読んでも愉快にはなりませんが、内容的には「おおっ!」と驚かされるような直感の冴えがあります。
本書では柄谷行人の解説が見事です。知識の整理にも役立ちますし、資本主義の「社会関係の総体」ないしは「可能性の中心」が少しずつ変化し、移行していくところがうまくとらえられていてさすがでした。
しかし、マルクスを読んでも経済という現象の不思議さについては、まだまだ十分なヒントが得られるわけではありません。
ジェーン・ジェイコブズの問題提起を受けとめつつ、今後もさらにいろいろと勉強していくつもりです。
(平凡社ライブラリー2012年1000円税別)
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