松長有慶『空海 般若心経の秘密を読み解く』増補版
空海によれば、般若心経は大乗仏典の「空」の思想のエッセンスではなく、仏教のあらゆる教えを含んだ経典だとのことです。
したがって、単なる通り一遍の読み方ではなく、象徴的で深い読みに加えて、その読みを現実世界の中で体感できるような創造的読解力が必要とされるらしいです。
空海の著作『般若心経秘鍵』はそうした目的で書かれた本だということで、本書はその解説と逐語的注解を試みています。
なるほど歴史的脈絡と、空海のユニークさはわかりましたが、その空海のすごさの中心が、どうも言語的には表現できるものではないらしく、本書だけからでははっきりとはわかりません。
『声字実相義』からの汎リズ無論の引用などは「おお、」と思わされますが、般若心経のどこをどう読むとすごいことになるのかは、これというところが見つかりません。
般若心経は歴史的には霊験あらたかでありがたいお経として、世界各地で人びとが書写し、唱和してきたという事実はあります。
唱えるだけでもいいことがあるというのは宗教的には面目躍如たるものがありますが、「わけもわからずに唱えていいことがあるのだろうか」とつい考えてしまいます。
しかし、在家のままでは無理と言われたとしたら、それはそれで面白くないので、今後本書で紹介されている文献の幾つかを読んでみようかと思っています。
(春秋社2013年増補版、2,100円+税)

