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2013年10月 5日 (土)

ケルゼン『デモクラシーの本質と価値』

民主制は自由を前提として保障し、規範的国家的意志を確立するという点で支持できるというのがケルゼンの考えのようです。

シンプルな主張ですが、議論はあまりシンプルではありません。ヨーロパの知識人らしく、民主主義の怪しいところやえげつないところも承知した上での発言なのでしょうから、どこかわれわれにはわかりにくいところがあります。

初版と第二版を読み比べたわけではないのですが、解説によると結構な異同があるそうですので、おそらくケルゼン自身いろいろと逡巡しながら書き直して出来上がった本なのでしょう。

ケルゼンはヨーロッパの学者によくありますが、何度も若いときの本を上書きしながら自身の立場を練りなおしていくところがありますので、初版本だけにこだわっていると、当の本人から批判されたりすることもあります。

ハンガリーのショムローなんかは生前ケルゼンとは親しかったのですが、昔の自分の本の立場を変更したので、あなたの立場には賛成出来ないと言われたりしています。

それはそうと、本書でもケルゼンは一見官僚制について弁護するようなことを言ってみたり、国民の自由を擁護する立場にもかかわらず、その例として最後にバラバが恩赦されてキリストが処刑される例なんかを出してきたりするので、読んでいて混乱させられます。

本書は1932年の第二版に基づいた翻訳ですが、1936年にナチスが政権をとったことも踏まえて、第二次大戦後に新たな版を書いていたら、また違った記述になったのではないかと邪推したりしています。

訳文自体も決してわかりやすくはないので、原書と付き合わせて読んだほうがいいのかもしれません。

でも、本当はもう、ケルゼンがどう言ったかではなくて、日本人自身で民主主義のことをしっかり考える必要がありますね、長谷川三千子さんみたいに。

長谷川三千子『民主主義とは何なのか』(文春新書)は今読んでいます。これは新鮮な指摘に満ちています。またいずれ感想を書きます。

(岩波文庫1966年改版)

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