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2013年12月27日 (金)

瀧本哲史『僕は君たちに武器を配りたい』(エッセンシャル版)

これからの先に読めない世の中に出ていく若者に向けて書かれた本ですが、先の読めない業界に身を置くおじさんにも有益でした。

本書にはいろいろと重要な指摘と具体的な方策が詰まっていますが、個人的に特に印象的だった点を勝手に以下にまとめます。


すなわち、著者によれば、弱肉強食の資本主義社会においては、起業家/投資家としての視点を持ちながら、以下のような点に力を注ぐことが大切になります。

1.起業する場合には「仮想敵」のいる市場を狙うこと(吉野家を仮想敵にした松屋、マイクロソフトを仮想敵にしたアップル)

2.イノベーションの武器としての英語の重要性(今ある技術を組み合わせてイノベーションを生み出す際に世界市場に向けて情報を発信するツールとしての英語は必要不可欠な武器になる)

3.幅広い分野の学問領域を横断的に学ぶ教養科目、すなわち「リベラル・アーツ」の有用性(多角的/複眼的思考力、問題発見/解決能力、コミュニケーション能力、人格陶冶)

といった3点です。

サラリーマンとして人に使われるための能力は著者に言わせると「奴隷の勉強」です。実際、このところ大学なんかもこればかり磨いているので、簡単に取替えのきくワーキング・プア製造機関になりかねません。

とりわけリベラル・アーツの効用が強調されているところは新鮮でした。人と人、能力と能力をつなぐ触媒になるための基礎も養われると思います。今日の大学(大手以外)もこれにシフトすることができれば生き残りは可能ですね。

しかし、大学が動脈硬化に陥っている現状では、時代の先端を見据えた私塾を開くことを本気で考えなければならないと思います。開きましょうか。

(講談社文庫2013年476円税別)


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2013年12月11日 (水)

イツァーク・ギルボア『意思決定論入門』川越敏司+佐々木俊一郎訳

われわれがこれこそと思って意思決定する事柄がしばしばものの見事に外れていることを教えてくれる本です。

個人的には第二章の行動経済学や社会心理学の研究成果をまとめたところが授業に使えるのでありがたいです。

第三章の統計データの理解については、馴染みのない数式や記号が出てきて大変ですが、よく見るとそこはかとなくわかってきます。しかし、自分の理解に十分な確信が持てないので、そのうち何かで調べてみるつもりです。

人間の「間違い」については近いうちに教科書にまとめたいと思っていますので、本書にはこれからも何度もお世話になりそうです。

問題設定−解説というスタイルの書き方で、読みやすいです。いつも持ち歩いてパズルを解くように問題を考えるという読み方もできます。

「練習問題」も付いていて楽しいのですが、正解はついていないので、あくまで自分で考えなければいけません。ま、それも楽しいかも。

それはそうと、本書を読むことで意思決定において典型的な間違いをしなくなるという著者の希望もあるようですが、やっぱり人間は愚かなので、そう簡単には行かないような気がします。

タレブみたいに、いい加減さや気まぐれを楽しもうというメッセージのほうが気楽であることは確かです。

(NTT出版2012年2800円+税)

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2013年12月 4日 (水)

島田裕巳『日本人はなぜ富士山を求めるのか  富士講と山岳信仰の原点』

いつものように平易な語り口で重要な問題をいろいろと指摘してくれる本です。

トリビアな知識にもいたるところで感心させられます。読者へのサービス精神のなせる技でしょうか。すぐに他人に受け売りしたくなります。

たとえば、

銭湯に富士山を描くのは関東だけ、それも男湯だけ(53頁)

キリスト教には宗教家が山に登るということがなく、正教会には山岳修行者はあっても、カトリックにはなかった(75頁)
岩などの手の加わっていない自然物が信仰の対象になるのは日本独特の現象(83頁)

火祭もかつてのゾロアスター教を除けば日本に独特の儀式であり、信仰(94頁)

といった感じです。

また、富士山の霊験が新興宗教の成立に関わるところが多いという指摘も興味深いものです。

「新宗教と富士山との関係を見ていくと、そこに登場するのは過激で、世間と衝突することの多い教団ばかりです」(219頁)

というのは、あらためてなるほどなあと思わされます。

そういえば私もパソコンのデスクトップには富士山の写真を置いています。そのせいか年々霊能力がアップしているような気がします(ウソ)。

でも、変な霊媒師なんかよりは人の悪意なんかは見抜けますよ。

もっとも、露骨に変なことをする輩がいるところがそもそも問題なのですが、まさか黒々と燃え立つような悪意がこちらに向けられることになるとは想定外でした。

これは霊能力というより、単純なプロファイリングなんですけどね。

鑑識に出して指紋を検出すれば万全ですが、愚かな犯人をそこまで追い詰めるのが妥当かどうかは迷うところです。紙についた指紋でも10年は消えないので、証拠だけは保全しておきます。

あ、これ、別件の、すでに解決済みの出来の悪いミステリーでした。

本の方はお勧めです。

(徳間書店2013年952円+税)

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