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2014年1月30日 (木)

ダン・アリエリー『ずる 嘘とごまかしの行動経済学』櫻井祐子訳

軽い気持ちで不正ができて、バレることはないという状況を設定して社会心理実験をすると、多くの人がこの誘惑に勝てないということがよくわかります。

著者も例外ではなくて、若いころユーレイルパスをごまかした経験を正直に披露しています。

本物の現金よりもトークンとか商品券のようなもののほうがごまかす率が上がったり、倫理基準を意識させると監視がなくてもごまかさなくなったりと、ケースごとに様々な興味深い事実が披露されています。

本書ではあくまでもごまかしが対象で、それは窃盗や詐欺といった本格的な犯罪行為ではありません(そちらについては別に犯罪研究が必要でしょうけれど)。しかしそれとは別に、人はしばしば自己イメージを維持または上げようとするため、ちょっとしたセコいことをしてしまいます。

他方で、とことん悪いことをしてしまうと自身の正当性が損なわれるので、そこまで極端な真似はしないという側面もあります。公正な自分というイメージの方につじつまを合わせようとするわけです。人というのはまったくもって微妙で厄介な生き物です。

もっとも、これがエンロンのように社員の大多数が粉飾経理に加担していたりするということになると、当然大きな損失につながりうるわけです。

これを制度的工夫によってどう未然に防ぐことができるかというのは、制度設計の際の重要なポイントになります。

本書では、疲労やストレス、ダメージがあると、まるで報復行為のようにごまかしの発生率が上昇するというデータも示されていて、興味深いです。社内ストレスを減らすことも重要なポイントですね。

また、創造性の高い人ほど不正に手を染める傾向もあって(自分が正しいという物語をこしらえるわけです)、全国の大学で研究費の不正使用があとをたたないのも、ひょっとしたら関係するのかもしれません。ただ、大学というところに必ずしも創造性の高い人が結集しているというわけでもないので、この辺りは割り引いて考える必要はありそうです。

また、ごまかしに関しては民族間の差がまったく現れないというデータも出ていて興味を惹かれます。あそこの国とかあそこの国などごまかしが多いに違いないと、当の国民が異議を挟んだりしていますが、民族間に有意差は見られないそうです。人類共通なんですね。

学生にも薦めなくては。

(早川書房2012年1800円+税)

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