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2014年3月12日 (水)

木村敏『自分ということ』

お値段高めのちくま文庫です。1000円もして、この薄さか、と思いますが、本書の中身は濃いです。

本書では「もの」と「こと」、「あいだ」とか「間」といった概念を軸に、魅力的な哲学的議論を展開されています。

「もの」はハイデガーにおけるノエマ、「こと」はノエシスということですが、そんなことを知らなくても、十分理解できます。
「『もの』が私にとって中立的・無差別的な客観的対象であるのに対して『こと』は私たちのそれに対する実践的関与をうながすはたらきをもっている」(52頁)

と言われてわかりにくくても、「私たちは『死というもの』を怖れることはないけれども、自分が『死ぬということ』はこの上なく恐ろしいことである」(同頁)と言われると、なるほどと思いますし、日本語でものを考えることの面白さを改めて教えられます。

そう、「もの」を考える「こと」の面白さなのです。日本の哲学者が外国人の哲学者の翻訳に終始する傾向があるのに、精神病理学がご専門の著者の方はさっさとその先を行っていて、本当に偉いものだと思います。

(ちくま学芸文庫2008年1000円+税)

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2014年3月10日 (月)

中谷宇吉郎『科学の方法』

いい本です。今まで読まなかったのが悔やまれます。

でも、今読むことができたのでよかったと思うことにします。

自然科学の方法の勘どころが実にうまく表現されています。

いろいろな実験の結果から推定しながら公理を立て、学問を組み立てていくという方法が印象に残りました。

とりわけ印象に残ったのは数学の意義を描き出している次の箇所です。

「基本的な自然現象の知識を、数学に翻訳すると、あとは数学という人類の頭脳を使って、この知識を整理したり、発展させたりすることができる。したがって、個人の頭脳ではとうてい到達し得られないところまで、人間の思考を導いていってくれる。そこにほんとうの意味での数学の大切さがある」(121ページ)

数学というのは理論の純粋系でもあるので、次のような箇所も興味深かったです。

「すなわち理論がその価値を発揮する場合は、この例[数学の例]のように、知識を整理することによって、普通の人間の考え及ばないところまで、思考が深められ、それによって新しい知識が得られ、次の発展を促すという場合である。ここまでいって、はじめて理論が、ほうとうの価値を発揮するのである」(175ページ)

このあたり、今書いている教科書にも使わせてもらうつもりです。

一家に一冊どうぞ。

(岩波新書1958年760円+税)

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2014年3月 5日 (水)

谷川俊太郎 作 松本大洋 絵 『かないくん』

素晴らしい絵本です。

絵とお話の距離感が見事で、

話の展開も重層的で、

場面の転換に爽やかさを感じます。

絵も装丁も素敵です。

一家に1冊、ぜひ。

(東京糸井重里事務所2014年1600円+税)

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2014年3月 1日 (土)

プラトン『ソクラテスの弁明・クリトン』久保勉訳/Kindle『ソクラテスの弁明』藤田大雪訳

授業の課題図書にするために再読、いや4回目くらいですか。

藤田訳を読んで、わかりやすくてよかったのですが、比較するつもりで久保訳もまた読んで、ついでに『クリトン』も読みました。

ソクラテスの有名な「無知の知」は本書に登場するのですが、色々と考えさせてくれます。

それにしても、ソクラテスのこの裁判は衆愚政治の結果というかリンチ裁判ですね。

なんと露骨な。

後、あらためてソクラテスが神々と対話をしながら生きていた人なんだということが印象に残ります。プラトンもそうですが、敬虔な人たちです。

彼らなりの神学/哲学にキリスト教を無理やり接ぎ木したのが中世哲学になっていくわけですが、そのあたりのことはジルソンの言うとおりという感じがします。このことはどこかで確認しておく必要がありそうです。→独り言です。

(岩波文庫1964年改版300円+税、Kindle版、150円)

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