木村敏『自分ということ』
お値段高めのちくま文庫です。1000円もして、この薄さか、と思いますが、本書の中身は濃いです。
「もの」はハイデガーにおけるノエマ、「こと」はノエシスということですが、そんなことを知らなくても、十分理解できます。
と言われてわかりにくくても、「私たちは『死というもの』を怖れることはないけれども、自分が『死ぬということ』はこの上なく恐ろしいことである」(同頁)と言われると、なるほどと思いますし、日本語でものを考えることの面白さを改めて教えられます。
そう、「もの」を考える「こと」の面白さなのです。日本の哲学者が外国人の哲学者の翻訳に終始する傾向があるのに、精神病理学がご専門の著者の方はさっさとその先を行っていて、本当に偉いものだと思います。
(ちくま学芸文庫2008年1000円+税)

