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2014年3月12日 (水)

木村敏『自分ということ』

お値段高めのちくま文庫です。1000円もして、この薄さか、と思いますが、本書の中身は濃いです。

本書では「もの」と「こと」、「あいだ」とか「間」といった概念を軸に、魅力的な哲学的議論を展開されています。

「もの」はハイデガーにおけるノエマ、「こと」はノエシスということですが、そんなことを知らなくても、十分理解できます。
「『もの』が私にとって中立的・無差別的な客観的対象であるのに対して『こと』は私たちのそれに対する実践的関与をうながすはたらきをもっている」(52頁)

と言われてわかりにくくても、「私たちは『死というもの』を怖れることはないけれども、自分が『死ぬということ』はこの上なく恐ろしいことである」(同頁)と言われると、なるほどと思いますし、日本語でものを考えることの面白さを改めて教えられます。

そう、「もの」を考える「こと」の面白さなのです。日本の哲学者が外国人の哲学者の翻訳に終始する傾向があるのに、精神病理学がご専門の著者の方はさっさとその先を行っていて、本当に偉いものだと思います。

(ちくま学芸文庫2008年1000円+税)

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