« 西加奈子『ふる』 | トップページ | エドワード・O・ウィルソン『人類はどこから来て、どこへ行くのか』斉藤隆央訳 »

2014年4月16日 (水)

歴史学の入門書(新書)三冊

 大学の授業で急に教養の歴史学を担当することになったので、学生たちに紹介するために以下の3冊をあらためて読み直しました。

1. E.H.カー『歴史とは何か』(清水幾太郎訳、岩波新書)
 名著の誉れ高い本です。しかし、今どきの学生には難しいでしょうね。現代政治史の事件と他の歴史学者の著作への言及が、煩雑な印象をあたえるため、今どきの学生はついていけないかもしれません。大事なことも随所に散りばめられているので、それを拾い出す根気が問われるところがあります。
 日本語にうるさいはずの翻訳者ですが、33ページに「すべからく過去を愛さねばならぬ」という「すべからく」の誤用があって、意外でした。

2. 小田中直樹『歴史学ってなんだ?』(PHP新書)
 学生向けの入門書としてもよくできています。書き方はソフトですが、結構言いたいことを言ってます。歴史学は「コミュニケーショナルに正しい認識」に到達しようとしているという指摘には教えられるところがありました。他者に対する説得力ということでもありますが、「こういうことはあったよね」という史実が存在するのは確かですから、そこに向けてのアプローチというのは一つの有力な立場だと思います。

3. 岡田英弘『歴史とはなにか』(文春新書)
 これが一番言いたいことが的確にというか、言いたい放題に言われていて、悪は強いですが、個人的には一番しっくり来る本でした。
 「歴史とは、人間の住む世界を、時間と空間の両方の軸に沿って、それも一個人が直接体験できる範囲を超えた尺度で、把握し、解釈し、理解し、叙述する営みのことである」(10頁)
 という定義も明解で、これが文化の違いや個人の好み、また、時代の制約を超えて、多くの人を説得でいる強い力を持つことが目指されています。

 結局授業では主にこの最後の本の定義を中心に説明するところから始めています。久しぶりの通学部の学生たちですが、みんなえらく真剣に聴いてくれているのが意外です。この調子で半期頑張ります。

|

« 西加奈子『ふる』 | トップページ | エドワード・O・ウィルソン『人類はどこから来て、どこへ行くのか』斉藤隆央訳 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。