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2014年4月13日 (日)

中谷宇吉郎『科学以前の心』福岡伸一=編

いい文章、いい編集、いい解説に加えてお嬢さんのあとがきまでみっちり楽しませてくれる文庫です。

著者の文章を読んでいるだけで幸せな気持ちになれます。何の奇をてらうでもなく普通に書かれているようでいて、その文体のリズムが心と体に染み渡ります。

名文を味わうだけで読み終えたと思っていましたが、あとで見返すと、いくつか線が引っ張ってありました。たとえばこんなところ。

「本統の科学というものは、自然に対する純真な驚異の念から出発すべきものである。不思議を解決するばかりが科学ではなく、平凡な世界の中に不思議を感ずることも科学の重要な要素であろう」(122頁)

「人間には二つの型があって、姓名の機械論が実証された時代がもし来たと仮定して、それで生命の神秘が消えたと思う人と、物質の神秘が増したと考える人とがある。そして科学の仕上仕事は前者の人に寄ってもできるであろうが、本統に新しい科学の分野を開く人は後者の型ではないだろうか」(125頁)

これは社会科学でもたぶんそうですね。そして、この基本がしばしば忘れられがちなのかもしれないと思ったりします。

(河出文庫2013年700円税別)

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