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2014年6月24日 (火)

ニーアル・ファーガソン『文明 西洋が覇権をとれた6つの真因』仙名紀訳

刺激的な本です。

副題の6つの真因とは、競争、科学、所有権、医学、消費社会、労働倫理で、これらを他の地域に先駆けて確立したところが、16世紀においては対オスマンにしても、中国にしても今ひとつぱっとしなかった西洋がいつのまにか覇権をとれた理由だと著者は言います。

なお、これに加えて他地域が極端に弱かったという歴史的な幸運も味方したと言っているところは公平で面白いです。

アメリカ大陸の北と南で発展形態が変わってしまったのは、宗主国の体制が影響しているという指摘もなるほどと思わされました。

「北米が南米より成功したのは、富の集中と権威主義というスペイン式より、所有権と民主主義の普及というイギリス式のほうがうまくいったということにほかならない」(237頁)

これは一例で、随所に慧眼が光っています。ただ、妙な思い込みもいくつかあって十字軍がイスラム圏に原因があるような書き方をしていたり(103頁)、イギリスの保護主義と高い生産性がインドの伝統的な手作りの織物産業を台無しにした(363頁)とか(本当はインドの綿織物職人の手首を切り落として産業を破壊したのに)、びっくりするような勘違いがあります。もちろん文献も参照されていません。大家といえども安心して読めないところがあります。

翻訳文で「檄を飛ばしている」の使い方が微妙なところがありますが(211頁)、これは翻訳者の責任でしょうね。経歴を見れば朝日新聞で雑誌編集を手がけていたという立派な経歴の翻訳者なのに、安心して読めないところがここにもあって残念です。

全体としてはいい本なのですけどね。

(勁草書房2012年3,300円+税)

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