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2014年6月25日 (水)

水島広子『上司・友人・家族・ご近所… 身近な人の「攻撃」がスーッとなくなる本』

こういう問題で悩まされている人にとっては福音です。

実にわかりやすく具体的な助言がなされています。

攻撃してくる人というのは「一見エラそうに見えても、実は傷ついていて、本当の意味で自信がない人たち」(41頁)ですので、実は「困っている人」だと著者は言います。

そこで、決して自分を被害者だと思わずに、しかし、嫌なことをされた衝撃は一過性のものとして反応しつつ、相手の土俵に乗らないことが肝要です。反撃するのは全く効果的でないとも著者は言います。

攻撃してくる人は困っている人と見て、自分は「攻撃された被害者」ではなく、「自由な他人」として、攻撃をかわすことが推奨されています。

特に重要な人や親しい人でなければ、かわすことがベストのようです。

しかし、こちらも聖人君子ではないので、やはり反撃したくなるんですよね。そして、その気持ちを抑えるためにも本書は役に立ちます。

著者の指摘で「他人を攻撃するとき、人は自分自身のことも攻撃しているのです」(71頁)とあるのは納得です。そうした人は実はこちらから反撃するまでもなく日々自爆を繰り返しているのがわかりますから。実際に変な行動を繰り返す人は、ストレスフルで病気をしたり、妙に老けたりしてますもんね。

一説によると、脳は主語を理解できないので、相手を悪く思うと脳は自分のこととしてダメージをうけるそうです。分かる気がします。

いずれにしてもそういう人は、身体から立ち上る悪意を周囲にくろぐろと漂わせていたりするから、近寄りたくなくなります。

職員を騙って脅迫状を寄越したり、友だちでもないのにFBでブロックしてみたり、ちょっとしたものをくすねたり、盗み見したりと変なことする人はありますが、周囲の人はみんな気がついています。人間の直感というものはあなどれません。気づかないのは本人だけという状況です。

これは一例ですが、こんなのが一人だけではなく組織全体には何人もいるのだから厄介です。そのうえ権力を持っていたりすると手が付けられません。

ちなみに、こうした連中からの匿名の脅迫状だけでも組織の中枢の部署の担当者は(おそらくは各部署から)たくさんもらうそうですから、原始時代の人間の少なくとも4人に1人は殺人で命を落としていたという話は、実行を伴わないだけで、今日もその動機だけはずっと生き続けているようです。
くわばらくわばら。

でも、本書を読むことで今後とるべき方法が確認できてありがたかったです。

(大和出版2012年1300円+税)



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2014年6月24日 (火)

ニーアル・ファーガソン『文明 西洋が覇権をとれた6つの真因』仙名紀訳

刺激的な本です。

副題の6つの真因とは、競争、科学、所有権、医学、消費社会、労働倫理で、これらを他の地域に先駆けて確立したところが、16世紀においては対オスマンにしても、中国にしても今ひとつぱっとしなかった西洋がいつのまにか覇権をとれた理由だと著者は言います。

なお、これに加えて他地域が極端に弱かったという歴史的な幸運も味方したと言っているところは公平で面白いです。

アメリカ大陸の北と南で発展形態が変わってしまったのは、宗主国の体制が影響しているという指摘もなるほどと思わされました。

「北米が南米より成功したのは、富の集中と権威主義というスペイン式より、所有権と民主主義の普及というイギリス式のほうがうまくいったということにほかならない」(237頁)

これは一例で、随所に慧眼が光っています。ただ、妙な思い込みもいくつかあって十字軍がイスラム圏に原因があるような書き方をしていたり(103頁)、イギリスの保護主義と高い生産性がインドの伝統的な手作りの織物産業を台無しにした(363頁)とか(本当はインドの綿織物職人の手首を切り落として産業を破壊したのに)、びっくりするような勘違いがあります。もちろん文献も参照されていません。大家といえども安心して読めないところがあります。

翻訳文で「檄を飛ばしている」の使い方が微妙なところがありますが(211頁)、これは翻訳者の責任でしょうね。経歴を見れば朝日新聞で雑誌編集を手がけていたという立派な経歴の翻訳者なのに、安心して読めないところがここにもあって残念です。

全体としてはいい本なのですけどね。

(勁草書房2012年3,300円+税)

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2014年6月23日 (月)

ジョージ・サイモン『あなたの心を操る隣人たち 忍びよる「マニピュレーター」の見分け方、対処法』秋山勝訳

身の回りにこういう人は結構いるので、対処しなければなりません。

いい人を装って人を操ろうとするタイプのことです。

術中にハマったら、自分が悪いことをしているような気がして抜け出せなくなるとのこと。

こんな人が近くにいる場合、相手がそう仕向けてくる些細な兆候をつかんで自己防衛しなければなりません。

著者はカウンセリングの専門家なので、そういう被害者(あるいは時には加害者)の悩みをたくさん聴いてきた人です。説得力があります。

著者によると、この手のマニピュレーターと向かい合っていると、なぜか怒りがこみ上げてきてどうしようもなくなるのですが、それでいて最後には自分が引け目を覚えることになるそうです(14頁)。

人間には危険を察知する能力があるので、こうしたときの"直感"を信じることが自己防衛の第一歩になるようです。

実際、分かるものです。近くにいるだけで不愉快になるからです。

こういう人は本人がバレてないと思って非常識かつ滑稽な振る舞いをしている場合も少なくありません。自分の欲求が押さえられなくて、ついつい変な挙動に出てしまうようですが、その場合、一種のブラインド効果が生まれるようです。

言ってみれば、邪悪さでできた色眼鏡を掛けているので、人もみんな邪悪に見えるのでしょうけれど、このとき自分は他の人からは見られていないという錯覚に陥るようです。ま、結果として変な挙動は組織の隅々に至るまで知られることになります。なにせ常軌を逸していますから。

したがって、あとは敬して遠ざけるようにつとめるだけです。もっとも、これが直属の上司だったりしたら大変ですが、幸い私に関してはそれはありません。

職場の場合、異同や退職などで接点がなくなったらまあ大丈夫です。ただし、本書に出てくるように夫婦や親子間でこういう関係になると、とてつもなく厄介でしょうね。

こういう問題を確認しておくためにもいい本でした。訳文も読みやすかったです。

(草思社2013年1600円+税)

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2014年6月20日 (金)

辻大介・是永論・関谷直也『コミュニケーション論をつかむ』

コミュニケーション論の教科書としてはほぼすべての論点を網羅し、丁寧に作られていて、テキストにちょうどいい本です。

これにしようかな。今年の五月に出たばかりの最新版ですし。

各章末に「ホームワーク」という問題もついていて独学の指針になります。

最近の教科書はこうした配慮があって助かります。

ひょっとして大学院生時代に学習塾で教えていた経験のある執筆者が多いからではないかという気がしています。学習者の立場を創造することに長けている人が多いように見えます。

読書案内も丁寧で有益です。

もう2冊ほど目を通してから決めたいと思いますが、有力候補の一冊です。

(有斐閣2014年2000円+税)

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2014年6月18日 (水)

船津衛『コミュニケーション・入門 心の中からインターネットまで』

短大のコミュニケーション論という科目の教科書選定のために読みました。

大学1年生が社会学入門を終えたくらいの知識で取り組むといい内容の本です。

もっとも、大学の科目としてのコミュニケーション論自体が何だかよくわからないところがあるので、著者にかぎらずわが国の執筆者たちは皆困っているんじゃないかと邪推します。

一昔前の比較文化論がそうで、大学のカリキュラムとしてはそれなりに収まりがよく見えましたが、案外ちゃんとした本がなくて、担当すると往生したものです(今は自分の本を使っていますが)。

というのも、コミュニケーションのツールがどんどん発展するので、教科書を書いた途端に取り残されるという事態が生じるのと、理論面で社会学畑の人がネットワーク理論をうまく取り込めていないという事情があるからです。

本書ではケータイによるコミュニケーションが論じられていますが、今日のスマホとアプリの時代にはちょっと古くなってしまっています。

この手の本としては一人の著者の手になるもので、通読しやすい点はありがたいです。ただ、ここから問題を拾いだして論じてもらうという通信教育のテキストにするのはあまり適切ではなさそうです。あと3~4冊目を通してみてからまた考えることにします。

(有斐閣アルマ2010年改訂版、1,800円+税)

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2014年6月 4日 (水)

ロバート・I・サットン『あなたの職場のイヤな奴』矢口誠訳

「クソッタレ」asshole と著者が呼ぶ職場のイヤな奴についての本です。

基準の一つは、クソッタレと会話を交わすと卑屈な気分になり、憂鬱になったり、屈辱を感じたり、やる気を失うこと。もう一つはクソッタレと目さている人物が悪意を向ける対象が自分よりも力の弱い者だということだそうです(25頁)

いますね〜。あれとあれなんかそうです。あれもそうだったかな。

この手のタイプは昇任と同時にパワハラや暴言に拍車がかかるので、周囲の迷惑というより被害が目に浮かびます。

さらに悪いことに、クソッタレはクソッタレ同士で団結しがちで、クソッタレ上司がこれまたクソッタレを評価するため、クソッタレがいつのまにか管理職や経営陣に昇任・出世しちゃうのが始末に負えません。

本書は経営管理論の立場からこうしたクソッタレの生態をきっちり分析しています。クソッタレの傾向と対策を知るための最良の一冊です。

ただ、おそらく原書にはあった参考文献が紙幅の関係で割愛されているのでしょう。その点だけが残念です。アマゾンで原書を注文しておきます。

翻訳も読みやすいです。
本書ではクソッタレ撲滅ルールなども紹介されていて、実際にこれを実行しているインテルやグーグル、サウスウエスト航空などの実例も参考になります。常備薬として一家に一冊どうぞ。

(講談社2008年1500円+税)

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