天才的な個人の卓越したアイデアによってビジネスで華々しい成功をおさめるという成功譚は後から作られた神話である場合が多いようで、実際には本書に登場するグーグルやピクサー、アマゾン、スタバといった企業は小さなトライアル・アンド・エラーそして軌道修正を繰り返しながら成功を手に入れてきたようです。
今構想中の本で間違いの活かし方について考える章があるのですが、実例も豊富で、邦訳参考文献も挙げてあり、助かります。関連文献を芋づる式に読んでいきたいと思います。
特に面白いと思ったのはキャロル・ドゥエックによる「固定的マインドセット」と「成長志向のマインドセット」の違いで、前者は頭が良いと見られたい欲望が強く後ろ向きであるのに対して、後者は学ぶ意欲が強く失敗にへこたれない態度を指します。
当然後者のほうが高いレベルの成功を手にすることになるのですが、褒め方一つでこのマインドセットが変わりうることも示唆されています。人の能力だけを賞賛すると粘り強さに悪影響があるのに対して、問題解決のための努力やその過程でいかに学んだかを賞賛すると成長志向になるんだそうです。
親が子どもを褒めるときも注意しなきゃですね。
ところで、先日読んだワイズマン『運のいい人の法則』も引き合いに出されていましたが、この引用が、著者の言いたいことに合わせて都合良く改変されていて驚きました(199頁)。まあ、アメリカ人の書くものではライターでも学者でもよくあることですが、話を面白くしようとし過ぎなのかもしれません。
誤植に二つ気がつきました。
72頁最後から5行目「キャットムル」が「キャッットムル」に、
166頁最後から6行目「ユヌス」が「ユナス」になってます。
あとウイリアム・ハンプスによるユーモアの効果についての研究が出典が示されていなくて残念です。検索でも引っかかりませんし、これ以上調べがつきません(124頁)。
でもまあ全体的にはいい本です。参考文献は確かめておく必要がありそうですが。
(日経BP社2012年1600円+税)