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2014年7月28日 (月)

ジョン・H・カートライト『進化心理学入門』鈴木光太郎・河野和明訳

いい本です。進化心理学の優れた入門書です。参考文献紹介も充実していて便利です。

進化心理学はダーウィン理論の再評価の上に成り立った面白い学問分野です。文献などをみていると、1990年代にそれらしく形が整ってきたようです。

特に今から一万年前に農耕が発明されるまでの、旧石器時代の人間の狩猟採集生活が環境に合わせて進化し、淘汰されてきたという道筋には興味を惹かれます。

人は100人から150人前後の知り合いの範囲を超えると把握できなくなると言われますが、それもこうした昔の狩猟時代にさかのぼって、その頃形成された能力だと説明されると、確かにわかったような気になります。

非合理に見える行動パターンもその来歴をたどれば結構わかってくるのかもしれないという期待を持たせてくれます。

この分野はもう少し渉猟してみます。狩猟民のつもりで。

(新曜社2005年1900円+税)

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2014年7月27日 (日)

リチャード・ドーキンス『遺伝子の川』垂水雄二訳

ダーウィン理論の理路をより先鋭化させるとドーキンスになるという感じです。

この戦闘的な論理性には感心させられます。

この方向で行くと創造説を認めず、無神論的な結論に至るのですが、欧米では風当たりも強いでしょうね。「あなたの立場は認めない」なんてわざわざ言いに来る人もいますしね。

しかしその点では味方もはっきりとしていて、強い支持者も同じくらい出てきます。アメリカはともかく、ヨーロッパの知識人は無神論者が少なくありませんから。

でまあ、それとは別に、著者は生物学者として様々な面白い情報も提供してくれています。複数の幼虫の必要に応じて、その体調を見ながら餌をそれぞれに与えるジガバチなんてのはファーブルは研究していたそですが、昆虫記には記述がありましたっけ。

日本人は宗教音痴なこともあり、ドーキンスを毛嫌いする人はあまり聞いたことがありません。でも、それならよく理解されているかというと疑問符もつきます。

『神は妄想である』は未読なので、いずれ読みたいと思っています。

(草思社文庫2014年700円+税)

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2014年7月26日 (土)

ピーター・シムズ『小さく賭けろ! 世界を変えた人と組織の成功の秘密』

天才的な個人の卓越したアイデアによってビジネスで華々しい成功をおさめるという成功譚は後から作られた神話である場合が多いようで、実際には本書に登場するグーグルやピクサー、アマゾン、スタバといった企業は小さなトライアル・アンド・エラーそして軌道修正を繰り返しながら成功を手に入れてきたようです。

今構想中の本で間違いの活かし方について考える章があるのですが、実例も豊富で、邦訳参考文献も挙げてあり、助かります。関連文献を芋づる式に読んでいきたいと思います。

特に面白いと思ったのはキャロル・ドゥエックによる「固定的マインドセット」と「成長志向のマインドセット」の違いで、前者は頭が良いと見られたい欲望が強く後ろ向きであるのに対して、後者は学ぶ意欲が強く失敗にへこたれない態度を指します。

当然後者のほうが高いレベルの成功を手にすることになるのですが、褒め方一つでこのマインドセットが変わりうることも示唆されています。人の能力だけを賞賛すると粘り強さに悪影響があるのに対して、問題解決のための努力やその過程でいかに学んだかを賞賛すると成長志向になるんだそうです。

親が子どもを褒めるときも注意しなきゃですね。

ところで、先日読んだワイズマン『運のいい人の法則』も引き合いに出されていましたが、この引用が、著者の言いたいことに合わせて都合良く改変されていて驚きました(199頁)。まあ、アメリカ人の書くものではライターでも学者でもよくあることですが、話を面白くしようとし過ぎなのかもしれません。

誤植に二つ気がつきました。
72頁最後から5行目「キャットムル」が「キャッットムル」に、
166頁最後から6行目「ユヌス」が「ユナス」になってます。

あとウイリアム・ハンプスによるユーモアの効果についての研究が出典が示されていなくて残念です。検索でも引っかかりませんし、これ以上調べがつきません(124頁)。

でもまあ全体的にはいい本です。参考文献は確かめておく必要がありそうですが。

(日経BP社2012年1600円+税)

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2014年7月23日 (水)

大垣昌夫・田中沙織『行動経済学』

経済学部の学生にはぜひ読んでほしい本です。行動経済学と伝統的経済学との接点がきっちり論じられていますし、神経経済学、文化経済学、幸福の経済学、リバタリアン・パターナリズムといった、新しい分野にもきっちり目配りがされています。

ただ、行動経済学の解説書としてはハードルが高いので、著者から直接講義を受けるのでなければ、数式もたくさん出てきますし、つらいと思います。

この分野については友野典男『行動経済学入門』(光文社新書)か、あるいはダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』(早川書房)上下巻がいいと思います。

しかし、行動経済学の他分野への影響の広がり具合がわかるという点でも興味深い本でした。各章の練習問題や巻末の付録も有益です。この本で授業を受けられたら実力がつきそうです。

(有斐閣2014年2400円+税)

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2014年7月20日 (日)

リチャード・ワイズマン『運のいい人の法則』矢羽野薫訳

運のいい人は基本的に自分で運がいいと思っている人で、だからこそ明るく楽天的で、失敗を恐れず、何度でもチャレンジするという積極的なキャラが確立しています。

そういう人だからこそまた、多くの人とのネットワークができ、そのネットワークを通じていい話が転がり込んでくるという好循環が起きます。

本書は自分で運がいいと思っている人はもとより、運が悪いと思っている人にも数多くの調査とインタビューを行い、そこから運のいい人の法則を見出します。

その法則とは、
 1 チャンスを最大限に広げる

 2 虫の知らせを聞き逃さない
 3 幸運を期待する
 4 不運を幸運に変える
という4つです。そして、著者はこれらの法則を意識して自ら運のいい人になるためのレッスンを提唱しています。

本書はキワモノではなく、理論や実験で確認できるところはきっちり確認しています。そしてそのことによって運という確率論的な問題をそのまま浮き彫りにし、これに遭遇するための様々な障壁を取り除くという実践的な解決を目指しています。

この姿勢は科学的で好感が持てます。

著者の心理学についての理解は次の表現に現れています。

「心理学とは、人の気持ちや行動を理解することだけではない。より幸せで満足できる人生を送れるように、心理的な変化や成長をうながすための学問でもある」(263頁)

フロイトやユンクを読んでいてもあまりツキが回ってくるような気はしませんが、本書はツキを呼び込んでくれそうな気がします。

いずれにしても、あらためて自分の行動を運を呼び込む方向にリセットするきっかけになりました。

(角川文庫平成23年705円税別)


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2014年7月13日 (日)

マイケル・トマセロ『ヒトはなぜ協力するのか』橋彌和秀訳

人は生後14〜18ヶ月くらいから誰に教わるともなく他者を援助し、それに先立つ生後12ヶ月の言語が未発達の段階でも、指差しによって他者に情報を提供し援助をしようとする、というのが、著者トマセロの実験からわかってきたことだそうです。

こうした援助および協力行動は、後天的に社会的な教育を受ける前から人だけに備わっている特徴だとトマセロは主張します。

人類だけが類人猿とは異なる複雑な規範と社会を作り上げてきた理由の一端はこのほとんど先天的といっていいような協力行動の能力にあるようです。

本書はこの著者に批判的な立場からの4つのコメントも堂々と述べられたシンポジウムが元になっていて、内容的にもうまくバランスがとれています。

立場の如何を超えて、読者が考える材料を公平に提供してくれます。

翻訳文も自然で読みやすく、いい本でした。

(勁草書房2013年、2,700円+税)



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2014年7月 1日 (火)

M・スコット・ペック『平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学』

こういう人に悩まされたり、あるいは現在悩まされている人なら、読んでおいて損はない本です。

著者が問題にしている邪悪さとは「自身の欠点を日々証明するものが暗に示している判定を否認し、これを攻撃さえしようという衝動に人を駆り立てる、ある種の尊大なプライドまたは傲慢さ」(104頁)に由来するものと見ています。

「彼らを支配しているのは、健全性、完全性という外見を維持するように絶えず彼らを鞭打っている、口やかましいナルシシズムである」(173頁)

いろんな本を読んでいると、それぞれに当てはまるタイプがいて、それぞれに納得させられますが、本書に関しても、ああ、あの人がぴったりというタイプがいます。悪事のボロを出してしまうのは、ナルシスティックに自分のことばかり考えてしまうからなんですね。

たとえば消印と日付と封筒の裏のバツの書き方、文章の中の細かいウソから脅迫状を書いた本人が特定されたりするわけです。本人はバレていないと思っているようですが、職場中にバレていたりします。

本書では人格障害の一種だとしていますが、納得です。かかわらないのが一番ですね。

(草思社1996年2200円+税)



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