ロビン・ダンバー『友達の数は何人? ダンバー数とつながりの進化心理学』藤井留美訳
いわゆる「ダンバー数」というのは著者の名前から来ていたんですね。友人や上手くいく集団の人数はほぼ150人前後といわれるのがそれです。
言われてみると思い当たるふしがあります。Facebookの友だちは実質それくらいが上限のような気もしますし、職場の人間関係もだいたいそんなところではないでしょうか。
人類は今から600万年前に類人猿に進化し、200万年前に直立歩行を始めましたが、そこから農業を発明する1万年前までは集団で狩りをしたりしながら、協力関係が維持できる程度の集団生活を送ってきたわけです。
その間に発達してきた行動や感受性のパターンというか、癖が今日にの人類にも引き継がれていると考えるのが、この進化心理学の基本的立場です。この分野は十分に実証可能というわけではなくて、仮説の説得力が決め手になるところがありますので、著者のように話題が豊富でおそらくは人前での話も巧みな研究者にとっては才能を発揮するのにうってつけの場所なのではないかと思います。
本書でもトリビアな知識がみっちりと書き込まれていて、めっぽう面白かったです。話題もどこに飛ぶのかこちらが心配になるくらいあちこちに寄り道します。講義を聞いているとさぞかし面白い人なのだろうなと思わされますが、細部の知識に「あれっ」と首を傾げざるをえないところがあり、そうなってくると、一事が万事で、全体の信憑性にも疑問符がつきかねません。
具体的には、アッティラのフン族の脅威に怯えた先住民がその言語を「いそいそと受けいれ」、「それが、今のハンガリーで話されているマジャール語になったのだ」(145頁)というとんでもないことが書かれています。
フン族とマジャル族は時代も人種も違うんですけど、それを誤解した昔の学者たちの影響で英語のHungaryにHunが残っていると言われます。しかし、まさか斯界では博識で通っている著者までもが、今日でも平気でこんなことを書いてしまうのですから、ハンガリー人たちはみんなにっこりと微笑んでいることでしょう。
こういうところには翻訳者や編集者が訳注でもつけてくれておいてくれるとありがたいですね。
(インターシフト2011年1600円+税)
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