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2014年10月 9日 (木)

石川幹人『だまされ上手が生き残る 入門! 進化心理学』

る人類には自らが進化する中で発達させてきた、というより、発達させた結果が今日まで幸運にも続いている様々な能力がたくさんあるにもかかわらず、それらを意識することもなく日々生活しているのですが、こういう学問分野が光を当ててくれることで、あらためてその不思議さに気付かされます。

だますのも人の常なら、それと知りながら相手にうまくだまされてあげるという高等戦術もまた可能ですし、著者が指摘するように、案外実際に私たちはやってきているのかもしれません。普通の人々はそうやって人間関係を決定的には悪くしないようにしながら静かな生活を送っているわけですから。

かく言う私もサイコパスに近いような連中にはつとめてだまされてあげるようにしています。知らぬは本人ばかりなりというくらいにしておかないと、次に何をしてくるかわかりませんから。まあ、所属組織の中では有名で、みんなから鼻つまみ者だったりしますし、組織トップにまでその奇行はバレバレだったりするですが、本人だけは知らずにいるというのも、幸せの一種なのでしょうけど。

もともと山岸先生の社会心理学の中で紹介されていたフランクの著作『オデュッセウスの鎖』から進化心理学的説明に興味をいだいたのがきっかけですが、進化心理学の射程は実際大変広くて、行動経済学や社会心理学など様々な学問と関係があります。おかげさまで、授業でもいろいろと実験結果やエピソードが紹介できそうです。

日常のほとんど人間の本能に由来するのかと思うような感情は、人間が集団行動を始めた頃から蓄積されてきたものだったりするので、そこでは進化心理学の説明がしばしば有効だったりします。

人が別段経験したことはないのに、ほとんど生得的に蛇やゴキブリが嫌いだったり、ドクロを恐れたり、あるいは近親相姦を避けたりする感情や行動規範は、進化の途上でDNAに刻まれてきたものだということになるわけですが、そう言われてみれば、他に合理的な理由も文化的な理由も見いだせなかったりします。

こうなってくると仮説の巧拙が説得力に影響するので、発想力が豊かで文章力のある著者のような研究者はこの分野ではますます重宝され、生き残っていくという進化論的説明も可能です。

文献も適宜紹介されているので、また芋づる式に読んでいこうと思います。

(光文社新書2010年780円+税)

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