ダン・ガードナー『リスクにあなたは騙される』田淵健太訳
9・11後のアメリカでは、1年間で飛行機を避けて車で移動した人が増えたため、その年だけ1500人ほど交通事故死亡者も増えてしまったというデータがあります。本来飛行機で移動していたはずの人が、車で移動したことによる数字ということになるわけですが、人間の恐怖感というものは頭でわかっていても、著者のいう「腹」が直感的に恐怖を覚えるとどうしようもなくなります。
この「頭」と「腹」のたとえは、カーネマンのシステム1と2(順序で言うと2と1)にならったものですが、なかなかわかりやすくていいと思います。
本書の後半ではビン・ラディンとフセインを無理やり結びつけたあこぎなやり方がうまく説明されています。1%でもテロの危険があったら徹底的に潰すというチェイニー国防長官の発言などは「腹」から出たものですが、メディアがこれ一色に染まってしまって後戻りできなくなってしまったのは残念なことでした。
ただ、著者はこれでもかいわんばかりに様々な資料を用いて人間の判断のバイアスを証拠立ててくれますが、一般読者としてはお腹いっぱいになってしまいます。かと言って文献中が充実しているわけでもないので、研究者にとっても決して便利な本ではありません。
内容的にはとてもいい本ですが、いっそ、実例をもうちょっと絞って半分くらいの厚さの本にしてもらったらありがたかったです。
翻訳文も日本語として気になるところがなくて、よかったと思います。ただ、「頭」と「腹」の原語が何なのか気になることもあり、kindleの原書を注文しておいたほうがいいかもしれません。
(ハヤカワ文庫ノンフィクション2014年1060円+税)
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