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2014年12月30日 (火)

ベーコン『ノヴム・オルガヌム(新機関)』桂寿一訳

ベーコンも何度も読み返していますが、読むたびに発見があります。やはり只者ではありません。

今回は人間の知性を歪めるイドラ idola(幻影・妄想)について述べられた以下の表現が印象的でした。

人間の知性は(或いは迎えられ信じられているという理由で、或いは気に入ったからという理由で)一旦こうと決めたことには、これを支持しこれと合致するように、他の一切のことを引き寄せるものである。そしてたとい反証として働く事例の力や数がより大であっても、かの最初の理解にその権威が犯されずにいるためには[ときには]大きな悪意ある予断をあえてして、それら[反証]をば或いは観察しないか、或いは無視するか、或いはまた何か区別を立てて遠ざけ、かつ退けるかするのである(「アフォリズム第1巻46」87頁)

この直前には次のような記述もあります。

「人間の知性はその固有の性質から、それが見出す以上の秩序と斉一性とを、容易に事物のうちに想定するものである。そして、自然においては、多くのものが個性的で不等であるのに、知性は実際にはありもしない並行的なもの、対応的なもの、相関的なものがあると想像する」([45]86頁)

何とか細胞とかいろいろ連想させられます。

人間の間違いについての本を書いている最中ということもあり、こういうところにはあらためて感心させられます。

英語版はKindleの全集で読んでいますが、文章は明解でリズムが良く、ネイティヴ聞いてみなければわかりませんが、かなりの名文なのではないでしょうか。
(岩波文庫1978年660円+税)

 

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マルティン・ルター『新訳 キリスト者の自由・聖書への序言』石原謙訳

いわゆる信仰義認論が展開されているルターの代表的な著作の一つです。キリストに対する信仰が呼び覚まされるのは律法や行いではなく、正しい説教が「私に語られ」「理解されたとき」という箇所(31頁)が印象的でした。

聖書の言葉とその理性的解釈こそが信仰の核心になるという議論は、このあたりに始まると理解していいのでしょうか。

律法や行いではないと言いながら、後に現世での禁止規範はプロテスタントのほうがカトリックより厳しくなるのも興味深いところです。新訳はもちろん、旧約聖書まで綿密に読み込む結果なのかもしれません。

それにしても、ルターの修辞法を駆使した論争的なスタイルとには理性と情念が同居してせめぎ合っている感じがします。この一種の獰猛さには当時のカトリックも相当驚かされたのではないでしょうか。

(岩波文庫1955年480円+税)

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2014年12月17日 (水)

冨山和彦『なぜローカル経済から日本は甦るのか―GとLの経済成長戦略』

最近G型大学とL型大学でいろいろと物議をかもしている文科省の大学改革案の元になるアイデアは本書で展開されています。

なんであんなふうになるのかはよくわかりませんが、元になった本書は実に面白かったです。

著者は日本経済をグローバル圏とローカル圏の二つに分けた上で、そのどちらも立てようとする経済成長戦略を展開しています。

日本経済の有り様を実際に地方のバス会社の経営再建を手がけながらじっくり観察し練り上げられたのがこのアイデアです。

外国の理論家からの借り物ではなく、現実の経営から着想されたところが素晴らしいです。ケインズがどうしたとかクルーグマンがこうのたまったとかいうのでないところが理論倒れで、データまで曲解する経済学者たちとは違って信頼できます。

倒産法の改正案も説得的です。著者の具体的な社会・経済政策の提言が今後の政策に活かされることを期待したいと思います。

(PHP新書2014年780円税別)

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2014年12月14日 (日)

ロアルド・ダール『キス・キス』開高健訳

面白かったです。

不思議な味わいの、黒い笑いや恐怖の詰まった短篇集でした。

あのアドルフがあんな形で出てくるのも印象的でした。

アドルフってもちろんヒトラーのことですが。

著者が短編小説の名手と呼ばれるのもわかります。さすがです。

電子書籍でダウンロードして、iPhoneで電車の中で読みました。

電子書籍リーダーhontoのアプリの動作もまずまずです。

版元は早川書房です。

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2014年12月 1日 (月)

キース・ソーヤー『凡才の集団は孤高の天才に勝る―「グループ・ジーニアス」が生み出すものすごいアイデア』金子宣子訳

タイトルどおりの本です。

というか、イノベーションに関しては、孤高の天才というのも、むしろいろんな人と言葉を交わし、刺激を与え合う中から生まれてきたということを、著者はいろいろ実例を挙げてくれていて、大変参考になります。

天才的業績が天才だけのものではないということは、天才を持ち上げる風潮の中では見落とされがちです。

画期的イノベーションの背景に何人もの協力者があることや、フラットな組織環境があることを丹念に調べていけば、みんなが可能性に気がつき、勇気づけられるでしょうし、それぞれの持場で今やるべきことが見えてきます。

翻訳はおおむねいいと思いますが、思考実験の問題文で、何を言っているのかわかりにくいところがあったのと、130頁の "fly fuit" は fly fruit の誤植かなと思って調べてみたら、誤植はそれとして、fruit fly のほうが一般的なショウジョウバエを意味する表現のようですけど、どうなんでしょう。

今書いている本の参考にしたいので、原書も入手しておかなきゃです。

(ダイヤモンド社2009年1800円+税)

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