池内恵『イスラーム国の衝撃』
わが国にもこんなふうにまともな研究者がいるのはありがたいことです。
アルカーイダから別れていつの間にか独特な形で増殖してきたイスラム国についての客観的な情報が得られます。
ISISは実際には一般的な国家の体をなしていないのですが、情報戦略に長けていて、ネットワークのなかに出現するというヴァーチャルなところがあるので、簡単に殲滅することはできないように思われます。
イスラム教を大義名分にして理屈を述べていると、インテリが結構シンパになったりしますが、宗教の上に開き直って異教徒を奴隷にして売買しているところなんかは擁護できません。
この点について著者は、次のように述べています。
「このような国際社会の規範を逸脱する結論を、イスラーム教の神聖な経典やそれに準ずる教典から導き出すことについて、世界のイスラーム法学者はどのように反応しているのだろうか。このような法学解釈の根拠や論理展開に正面から反論する学者が出てこなければ、過激思想を正当なものとみなす次世代が育ちかねない。イスラーム世界にも、宗教テキストの人間主義的な立場からの批判的検討を許し、諸宗教間の平等や、宗教規範の相対化といった観念を取り入れた、宗教改革が求められる時期なのではないだろうか」(203頁)
まったくその通りです。
(文春新書2015年780円+税)
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