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2015年4月

2015年4月28日 (火)

高山正之『アメリカと中国は偉そうに嘘をつく』

いつもながら刺激的なタイトルですが、驚くべき事柄が実際に綿密な取材と実証資料に裏付けられているので、その点にもあらためて驚かされます。

本書では、沖縄が実は施政権だけの返還でアメリカと手を打った状態にあることが指摘されていて、言われてみると思い当たるフシがあります。日本政府の姿勢を見ていると確かにそうなのかも。(しかし、これからどうするのでしょうね。)

また、日本国憲法についてのAPやニューヨーク・タイムズの表現が「アメリカ製憲法」「米国政府の指図に従って書かれた」とか、「アメリカ陸軍が書いた日本国憲法」となっていることの指摘が、確かにその通りでした。

興味がある方はネットで記事も読めます。APは昨年7月1日付の記事、ニューヨーク・タイムズは翌7月2日付です。

どちらも集団的自衛権をめぐる安倍政権の批判記事ですが、ついついもらしてしまったアメリカのジャーナリズムの本音もわかって、何だかいろいろと感心させられます。

NYTなどは朝日新聞の社屋に支局があるというわかりやすい事情もあるのかもしれません。あそこにはニコラス・クリストフという今や珍獣扱いのトンデモ記者もいましたし。

他に、アーリントン墓地というのが南北戦争の南軍のリー将軍の名を辱めるためにその邸宅を潰して作られたところだというのも初めて知りました。敗軍の将を称えたりしないところが実はアメリカ的なのかもしれません。

かの国を敵に回すとえらい目にあうし、事実あってきたわけですが(今も大変な仕打ちにあっている国がありますし)、そのあたりはわが国の戦後史の中でよく検証する必要がありそうです。

(徳間書店2015年1300円+税)

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2015年4月11日 (土)

植松努『NASAより宇宙に近い町工場』

著者の植松努さんのことはTEDの講演で知りました。

お子さんのいる家庭の方にはぜひこの講演の動画を見せてあげてください。

子どもたちの心に火をつけてくれると思います。

本書はこの講演でも触れられた話題がさらに詳細に書き込まれているうえに、この著者の独特の発想もよくわかります。

著者はこの世から「どうせ無理」という言葉をなくすために北海道の町工場で宇宙開発をやっているのだそうです。

「どうせ無理」という言葉は人の可能性を殺してしまいかねない言葉で、著者もずいぶんこの言葉に苦しめられてきたといいます。

この言葉に対抗するキーワードが「だったらこうしてみたら」です。

「大好きなことについてたくさん本を読んで、自分で考えて、自分で試した瞬間、そこにもう世界初が存在するんです。そして世界初が自動的に世界一なんです」(173頁)

著者には、世の中のみんなが「どうせ無理」とあきらめず、努力と創意工夫を重ねることで自身が生まれ「優しさ」が得られるという好循環が社会を良くするという信念があります。

同感です。勇気づけられます。

(ディスカヴァー・トゥエンティワン2009年1300円+税)

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2015年4月 7日 (火)

ジェフリー・フェファー『「権力」を握る人の法則』村井章子訳

これは怖い本でした。

でも、読んでおくべき本です。

自分は権力に無縁だし、今後も無縁でいたいという人も、
組織の中で権力志向の人に一方的にやられてしまうことがありますから、
自己防衛の指南書として、相手の出方を予測することができます。

本書でもあるように、世の中は公正にできている(「公正世界仮説」just-world hypothethis)と考えたがる人が多いのですが、実際にはまったくそうではないわけで、権力志向の人はその隙を突いてくるのです。

様々な汚いやり口の汚さをなじっていても、問題は解決しません。防御のための知恵を絞って対抗あるいは無視するためにこそ、本書は有益です。

組織の中で何としてでも出世して権力を手中に収めたいと思う人は現実にうじゃうじゃいます。また、出世に関係なくサイコパス同然の嫌がらせをしてくる同僚も少なからずあります。何なんだあいつらはとは思いますが、あれが通常なんですね。

本書は現実の社会では善なる神が勝つことはないだろうという著者のリアルな見通しに貫かれています。長らく権力の有り様を社会心理学的視点から観察し続けてきた著者だけのことはあります。

翻訳は読みやすいです。村井章子さんのものはいつもそうです。

(日経ビジネス人文庫850円+税)



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