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2015年12月 1日 (火)

北野武『新しい道徳』

ちょっと前に流行ったサンデルなんか読むよりもずっと面白いです。

本当は日本の法哲学者や倫理学者もこういう本を書かなければいけないのでしょうけれど、横のものを縦にするだけで、ものを考えようとしない大多数の学者さんには無理でしょう。
ものを考えるという点では実は芸人のほうが始終世の中を観察し、体を張って考えてますから。
その点、本書はさすがにビートたけしだけのことはあって、随所に鋭い突っ込みがあって、考えさせてくれます。

サンデルより面白いというのは、たとえば、

「トンボの羽をむしって遊んでいたような子どもが改心して、檻の中に入れられている犬や猫がかわいそうだっていうんで、ペットショップに忍び込んで全部逃がしちゃったりしても、『いいことをしました』って学校の先生は褒めるのだろうか」(36頁)

とかいうあたりです。あらかじめカントやヘーゲルを仕込まれてお行儀よくサンデルの講義に臨んでも、せいぜい抽象的なトロッコ問題ですもんね。

印象的だったのは、道徳を他人任せにして変なところに連れて行かれることを警告しているところです。

「[昔の人は]道徳なんて言葉は使わなかったけれど、自分の哲学で自分の行動を律していた。今の大人たちの性根が据わっていないのは、道徳を人まかせにしているからだ」(152頁)

道徳を自分で考えるためにも、本書を一家に一冊どうぞ。

(幻冬舎2015年1000円+税)

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