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2016年1月10日 (日)

中村桂子『科学者が人間であること』

生物を総合的にとらえるための視点をまとめた本です。

「生命誌」という考え方がそれなのですが、本書ではその考えに至るまでの事情が丁寧に考察されています。

近代科学が生物を単なる機械仕掛けの物質としてとらえる機械論的生命観に立っていたのに対し、それでは生物ではなくて「死物」に過ぎず、生命の姿を本当にとらえることができないということが、哲学者の大森荘蔵の問題提起を受けつつ論じられていきます。

これはまったくその通りで異存はありませんし、宮沢賢治の科学観やマイケル・ポラニーの暗黙知の概念なども肯定的にとらえられていて、興味深く読むことができました。

ただ、著者が提唱する「生命誌」の考え方が今ひとつ具体的にわからないところがありました。近代科学が細密画に用になって全体がとらえ難くなっているところを、「略画」として「重ね書き」するというのは、大森荘蔵の考えに基づくものらしいのですが、この本だけでは十分につかまえきれません。

この「重ね書き」という思想の核心のところは、人間の自己治癒力などを考える上でおそらくかなり有効な視点になるのではないかと思われますが、勝手に自分が考えていることと重ねあわせているだけかもしれません。

著者の他の本と大森荘蔵の本をもう少し読んで理解を深めてみようと思います。

(岩波新書2013年800円+税)

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