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2016年3月

2016年3月31日 (木)

池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80』

Q&A方式で80題の練習問題が並んでいる読みやすい本です。

認知心理学、社会心理学、脳科学の様々な成果が手際よく紹介されていてわかりやすいので、先日の社会心理学のスクーリングにも使わせてもらいました。

書き方は簡潔ですが、題材は最新最先端のものを含んで、かなりの情報量だと思います。

巻末には225の認知バイアス概念が紹介してあり、錯視用語集50は図版とともに紹介されていて、それをパラパラと見ているだけでも楽しいです。このサービス精神には頭が下がります。

一家に一冊どうぞ。

(講談社ブルーバックス2016年1000円税別)

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2016年3月25日 (金)

ジョー・ナバロ/トニ・シアラ・ポインター『FBIプロファイラーが教える「危ない人」の見分け方』西田美緒子訳

周囲に見るからに危ない人や一見分からない危ない人がちらほらいるので、対策のために読んでみました。

本職のプロファイラーらしく、あかでみっくなかきかたではありませんが、経験的データの豊富さは半端でありません。

本書で言うところの「危ない人」は「ナルシシスト」「情緒不安定」「パラノイア」「プレデター」の4つに分類され、さらにその混合系が「モンスター」です。

幸いにも私に周囲にはプレデターやモンスターはいませんが、ナルシスト、情緒不安定、パラノイアの3類型とその混合系はいますね〜。

本書にはそれぞれにチェックリストがあって、それをチェックすると、「あ、やっぱりね」という感じがします。このチェックリストは有益です。これだけのために本書を買ってもいいくらいです。

さて、結局対策としては、そういう連中とははできるだけ関わり合いにならないことに尽きるのですが、仕事上接触を完全に避けるわけにも行かない場合は、頭痛の種になります。

面白いことに、人間に残っている動物的本能からか、利害関係も接点もないはずの人でも、みんなで集まる機会があると、それとなく近くに座らないように避けていたりするんです。身体が反応するんでしょうね。

プレデターやサイコパスになると化けるのが巧みになるみたいですが、単に自分の嫉妬心やコンプレックスから自分自身を見失って奇行に走るタイプというのは、雰囲気でまるわかりなので、避けるだけなら簡単です。

しかし、こうして書いているだけでも、そこはかとなく気持ちが悪くなってきました。しかし、くれぐれも対策は怠らないようにします。

翻訳文は読みやすくていいと思います。

(河出書房新社2015年2000円税別)

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2016年3月 1日 (火)

森田真生『数学する身体』

最近数学が苦手になりつつある高校生の娘におすすめの本はないかと思って読んでみました。

数学史の本かと思って読み進めていくと、最後は世界的数学者、岡潔の世界に導いてくれました。

岡潔の方法について著者は言います。

「数学において人は、主客二分したまま対象に関心を寄せるのではなく、自分が数学になりきってしまうのだ」(169頁)

「『無心』から『有心』に還る。その刹那に「わかる」。これが岡が道元や芭蕉から継承し、数学において実践した方法である。 なzせそんなことができるのか。それは自他を超えて、通い合う情があるからだ」(170頁)

ということで、情緒が大切なんですね。

この境地は日本的に見えて、本当は普遍的な気がします。もう少しはっきりと言語化する必要はあるとは思いますが、先日読んだ大森荘蔵の言っていることとも共鳴しています。

世界はある意味で、その見えるとおりにあるんですね。見ている自分も含めて。

いい本でした。今考えて着ることにもヒントを与えてくれました。

もっとも、これで数学の点が上がるというものではないかもしれませんが、娘にも勧めてみます。

(新潮社2015年1600円税別)

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